ボーイング・サウスカロライナ州工場で組合結成の動き

(米国)

アトランタ発

2018年06月07日

航空機製造最大手のボーイングのサウスカロライナ州工場で5月31日、労働組合結成に向けて国際機械工労組(IAM)による労使交渉を求める従業員投票が整備部門で行われ、169人中104人が賛成し、可決された。

整備部門で従業員投票、IAMによる労使交渉を可決

ボーイングは2008年のワシントン州工場でのストで生産が止まったことを受け、2011年にサウスカロライナ州に米国内2番目の航空機組み立て工場を設立し、787型機「ドリームライナー」の生産を行っている。

サウスカロライナ州は米国南部に多い「労働権法」(注)制定州の1つで、また、労働組合組織率が2.6%と全米で最も低い。隣接するテネシー州にある日産自動車やフォルクスワーゲン(VW)で労働組合結成が否決されるなど、南部では労働者の組織化が困難とされている。

IAMは既にボーイング・ワシントン州工場で労働者の組織化を行っており、同社サウスカロライナ州工場でも従業員の組織化を目指してきた。しかし、2015年には従業員投票前に申し立てを撤回、2017年2月に約3,000人の従業員を対象に行われた従業員投票でも74%が反対し大差で否決された。

今回の投票は、ワシントン州工場に比べて7割と低い給与水準にあり、休日残業・解雇条件・昇給時期削減などの待遇に不満を持つサウスカロライナ州工場の整備部門従業員がIAMに直訴して行われたもの。契約雇用を含む同工場の全従業員約6,700人に比べるとごく少数派ではあるが、IAMにとっては同工場における労使交渉の第一歩で、従業員の組織化が困難な南部においては大きな勝利だと労働問題の専門家は語る。

南東部7州での労働組合加入者は、ミレニアル世代を中心に増加傾向がみられるという。ボーイング工場のあるサウスカロライナ州チャールストン地域にはボルボやメルセデス・ベンツの工場が2018年に開設される予定だが、両社共に、労働組合結成の動きを阻止するつもりはないとしている。

フェイスブックやツイッターなどを通じて反組合キャンペーンを展開してきたボーイングは、今回の結果に遺憾の意を表明し、対抗措置を取る一方で、従業員への待遇改善に努めるとしている。

(注)労働権法:雇用の条件として組合への参加義務付けを行うことを禁止する法律。現在、全米28州が制定している。

(ラマース直子)

(米国)

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