カナダ政財界、トランプ大統領と対立のトルドー首相支持で一致

(カナダ、米国)

トロント発

2018年06月14日

カナダ首相官邸は6月10日、誰もが裨益(ひえき)する経済成長の創出に焦点を当てたG7首脳会議(6月8~9日)が終了した旨を発表した。

フリーランド外相がトランプ大統領に反論

G7の記者会見でトルドー首相は、トランプ米大統領による鉄鋼とアルミニウム製品に対する関税賦課措置を非難した。これに対して、北朝鮮との会談のためG7閉会前にシンガポールに向かっていたトランプ大統領はツイートし、G7に残った米国代表者に対して共同宣言に署名しないように指示し、トルドー首相を強く非難。ホワイトハウス高官も厳しい口調でトルドー首相を批判した。

米国の非難について、フリーランド外相はメディアの取材に対し、「カナダは個人攻撃を通じた外交は行わない」と反論した。また、カナダは脅しに屈せず、米国が鉄鋼とアルミニウム製品に対する関税賦課措置を取り消さない限り、160億カナダ・ドル(約1兆3,600億円、Cドル、1Cドル=約85円)に上る報復関税で対抗するとの見解を示した(「グローブ・アンド・メール」紙6月10日)。

トランプ大統領のトルドー首相に対する非難について、通常は首相に反対の立場を取る野党からも首相を支持する発言が相次いだ。保守党のアンドリュー・シアー党首は「トルドー首相の自由貿易問題に対する努力を支持する」とツイートした。スティーブン・ハーパー前首相(保守党)は「フォックス・ニュース」のインタビュー(6月10日)で、「カナダとの貿易赤字が小さいだけでなく、米国はカナダに対して経常収支黒字を計上している。カナダは米国製品やサービスの世界最大の購入者であり、(カナダを)標的にするのは誤っている」と指摘した。

加米自由貿易協定(FTA)交渉で次席主任交渉官を務めたゴードン・リッチー氏は、トランプ大統領が繰り出す侮辱や無礼なコメントに応酬せず、実行可能な北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に注力するべきとの見解を述べた(「グローブ・アンド・メール」紙6月10日)。

カナダ商工会議所(CCC)は、6月12日に開催したG7に関する電話カンファレンスで、カナダが州や産業を隔てることなく1つの国としてトルドー首相を支持し、米国の課税措置に対する反対の声を一緒に発信していく必要があるとの見解を示した。また、今後半年以内に予定されているメキシコ大統領選挙および米国中間選挙の結果が、両国政府内で多くの変化を生じさせる可能性を指摘した。

なお、G7会合に先立ち、トルドー首相は6月8日に安倍晋三首相と会談し、世界平和や北朝鮮の非核化のような安全保障問題についてのG7首脳間の協力継続の重要性を強調した。さらに両首脳は、イノベーションや投資分野で緊密な協力関係を築くことで合意するとともに、富士通が新たに人工知能(AI)と量子コンピュータ部門の本社をバンクーバーに設立する計画を歓迎した。また両首脳は、共通の目標である、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)の早期発効に向けた議論を行った。

(伊藤敏一、シェイマス・フレイム)

(カナダ、米国)

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