大手銀行、低金利を背景に貸出残高拡大

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年06月14日

銀行最大手ズベルバンクが5月30日に発表した2018年第1四半期の財務諸表(国際会計基準)によると、純金利収入は3,586億ルーブル(約6,455億円、1ルーブル=約1.8円)で前年同期比6.5%増だった。国内の低金利傾向を背景に貸出残高が伸び、金利収入の拡大につながった。非金利収入の純手数料収入は、主に銀行カード業務が伸び21.4%増の1,015億ルーブルを計上、純利益は2,120億ルーブルで26.3%増だった。

ズベルバンクに次ぐ大手の外国貿易銀行(VTB)は、純金利収入が前年同期比2.9%増の1,163億ルーブルとなった。ズベルバンク同様に貸出残高の拡大が要因だ。純手数料収入も11.2%増の219億ルーブル。手数料が発生する各業務の好調な営業成績に加え、保険商品や代行サービスの拡大が寄与した。純利益は556億ルーブルと、前年同期比で倍増となった(5月17日発表)。

サンクトペテルブルクに拠点を置く地銀大手のサンクトペテルブルク銀行も5月29日に第1四半期の財務諸表を発表。純金利収入は前年同期比13.5%増の50億5,384万ルーブル、純利益は24.2%増の18億3,407万ルーブルだった。同行のアレクサンドル・サベリエフ頭取は、「優良債務者への貸し付けを増やしリスクを低減させた結果、利幅が減少しても収益率は上がった」としている。

個人向けに偏る貸し出し

歴史的な低金利を背景に銀行業界は貸出残高を積極的に増やすが、貸付は住宅ローンなど個人向けに偏っている。中央銀行によると、2017年1月から2018年4月までで個人向け・一般企業向けの貸出利率は2ポイント程度低下した(図参照)。個人向け貸出残高は同期間で20%増加した一方、一般企業向け貸出残高に変化はない(注)。地方で中小企業への融資・債務保証を行う政府系基金の代表はジェトロに対し、「企業向け貸し付けを増やすためには、金融機関による過剰なリスク排除の姿勢(企業に融資額と同等の担保を要求)と貸付判断の硬直性(中小企業向け融資でも、地元でなくモスクワ本店の審査部で機械的に判断される)を改善する必要がある」と述べている(4月13日)。

図 貸付残高と貸付年利率

(注)ズベルバンクの2018年第1四半期の個人向け貸出残高は3.5%増だった一方、法人向けは0.1%増にとどまった。VTBも個人向けが2.6%増なのに対し、法人向けは0.6%増だった。

(高橋淳、市谷恵子)

(ロシア)

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