対米報復関税率は確定輸入のみに適用

(メキシコ)

メキシコ発

2018年06月08日

6月5日付官報で公布された政令の第2条が定める対米相殺関税率(鋼材の場合25%)は、メキシコにおいて確定輸入申告した場合にのみ適用される。つまり、IMMEXプログラムや戦略的保税区域(RFE)などを活用した一時輸入(ジェトロ・ウェブサイト「メキシコの外資に関する奨励」参照)の場合、相殺関税率は適用されない。なお、相殺関税の対象となっている鋼材のうち、以下の4品目については産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)の対象で、通常は関税率が0%となるが、PROSECを活用しても米国産品を確定輸入するは25%が適用される。

  • 7208.39.01(I:電気産業)
  • 7211.29.02(I:電気産業、および、XIX:自動車産業)
  • 7225.30.99(XIX:自動車産業)
  • 7225.40.01(XIX:自動車産業)

IMMEXプログラムを活用して対米輸出した場合はMFN税率の15%

IMMEXなどを活用している在メキシコ企業が部品・原材料を一時輸入する場合、メキシコの輸入通関制度上、輸入時には関税が保税となる。ただし、第三国の部品・原材料を米国、カナダ、欧州向けへ「輸出を目的として」関税を免税することは当該地域との間の自由貿易協定(FTA)の規定で禁じられている。そのため、これらの加盟国向けの再輸出の場合には、最終製品輸出後60日以内に(加盟国以外の国から輸入した部品・原材料について)は関税を支払わなければならない(税関法第63条-A)。この場合、補完申告の手続きを取ることになるわけだが、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)などの特恵税率や、「輸出を条件としない」国内生産促進措置であるPROSECの税率を適用できる。

今回公布された政令によると、税関法第63-A条に基づき製品輸出後60日以内に支払う関税率については、対米相殺関税対象品目であっても政令第2条が定める相殺関税率は適用されない。ただし、政令の第1条は、第2条と全く同じ品目について、まず北米自由貿易協定(NAFTA)の特恵を停止しており、その上で第2条に基づき相殺関税率を適用している。従って、IMMEXプログラムを活用した企業が対米相殺関税対象品目を一時輸入し、その後製品に加工して再輸出した後60日以内に補完申告を通じて支払う関税率としては、第2条の相殺関税率(25%)は適用されないものの、第1条でNAFTA特恵が停止されているために従来の0%にはならず、現時点でFTA非締結国に対して適用されているMFN(最恵国)関税率の15%が適用されることになる(注)。

(注)政令条文の解釈では不明確なため、メキシコ経済省貿易局のジョジョジェツィン・ニコラス・ディアス貿易プログラム関連手続き支援課課長補佐にジェトロが6月6日に電話で確認した。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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