欧州議会、「域内越境派遣労働者指令」改正案を可決

(EU)

ブリュッセル発

2018年05月31日

欧州議会は5月29日、本会議で「域内越境派遣労働者指令」改正案を可決した。同案は、閣僚理事会の常駐代表委員会(COREPER)で承認済みで、今後、正式に加盟国担当閣僚によって承認される見込み。加盟国は、新指令の適用開始から2年以内に関連法を整備しなければならない。

域内越境派遣労働者とは、EU加盟国で雇用され、サービス提供のため雇用主により一定期間他の加盟国に派遣される労働者だ。欧州委は本改正案を2016年に公表していたが、労働者の派遣元となる中・東欧などの加盟国が競争力の低下などを懸念し、審議が難航していた(2016年5月30日記事参照)。

同一地域での同一労働同一賃金を目指す

今回可決された法案では、域内越境派遣労働者には、勤務先の加盟国の全ての報酬ルールが適用されることとなる。加えて、加盟国は、代表的な地域・分野別の労使協定を適用することができる(建設部門は全域で導入済み)。また、域内越境派遣労働者の旅費や食費、宿泊費は雇用主が負担し、労働者の給与から差し引くことはできない。さらに、雇用主は、派遣先の加盟国ルールにのっとった、適切な水準の宿泊条件を確保しなければならない。

域内越境労働の期間は原則として12カ月が上限だが、6カ月の延長が認められ、最長で18カ月となる。労働者がこの期間を越えて派遣先の加盟国に滞在し、就労する場合は、派遣先加盟国の労働ルールを順守する必要がある。派遣職員として国境を越えて就労する越境派遣労働者も、派遣先の加盟国の派遣職員と同等の条件が適用される。また、ペーパーカンパニーなどを利用した制度の不正利用に対して、同指令を最低限の要件として、加盟国が協力して労働者を保護することも規定された。

なお、道路輸送部門に関しては、運輸・交通分野における域内越境派遣労働者に関する指令案が別途、発表されており(2017年7月4日記事参照)、同指令案の成立、適用開始まで現行の「域内越境派遣労働者指令」が適用される。

(村岡有)

(EU)

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