中銀が政策金利を40%へ引き上げ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年05月08日

5月に入ってからペソ安が急速に進み(添付資料参照)、中銀は金利を大短期間に27.25%から40%へと大幅に引き上げた。引き上げ幅は4月27日と5月3日にそれぞれ3%、4日には6.75%の3回で計12.75%に達した。さらに、中銀は金融機関に対しては1日当たりの外貨建て資産支出の上限をこれまでの30%から10%を超えないように指示した。

中銀がLebac(アルゼンチン短期国債)の金利を6.75%引き上げた4日午前、ドゥホブネ財政相とカプート金融相は金利引き上げと併せ、2018年のプライマリー・バランス目標を当初のマイナス3.2%からマイナス2.7%と厳格化するとともに公共料金引き上げの背景となっている補助金削減に反対している野党の動きを批判するなど財政規律維持の姿勢を強調した。なお、インフレ・ターゲットは引き続き2018年15%を目指す。

ペソの切り下げ圧力は2017年末ごろから高まっているとの見方がある。2018年第1四半期のLebac債金利の引き下げに加え、同年4月には投資家に対する課税強化(注1)、米国の金利引き上げによるキャリートレード(注2)の巻き戻しが起きているという指摘もある。なお、アルゼンチン国内ではインフレ抑制の手法に関し、財政規律を守りたい政府と公共料金引き下げに向けた補助金投入を狙う野党の間でつばぜり合いが激しくなっている。中銀はペソ安の抑制のために頻繁に為替介入を行っているとみられ、金融情報サイトAmbito.comによると、3月5日時点の外貨準備高(617億ドル)の11.8%に相当する金額の介入が5月2日までに行われているとのことだ。中銀はこれまでこうした介入を通じてドル・ペソレートの安定を図ってきたが、内外の状況変化でペソ売り圧力を支え切れず、大幅な金利引き上げによってインフレを抑え込む方針に切り替えたともいえる。

(注1)非居住者がペソ建てでアルゼンチン国債を購入して利益を得た場合、新たにキャピタルゲイン課税を導入することにしたもの(15%:ドル建てで購入した場合、5%:ペソ建てで購入した場合)。

(注2)低金利通貨で資金調達し、高金利通貨で運用して利ざやを稼ぐトレード。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

ビジネス短信 e80ed8ba4894410f