第1四半期の経常赤字は前年同期比95.5%拡大

(トルコ)

イスタンブール発

2018年05月21日

トルコ中央銀行発表(5月14日)の暫定値によると、2018年3月の経常赤字は市場予測の41億ドル超を上回る48億1,200万ドルとなり、第1四半期では前年同期比95.5%増の163億9,200万ドルに拡大した(添付資料の表1参照)。

リラ安に歯止めがかからず

中銀の発表を受けトルコ・リラは弱含みで推移し、5月17日には対ドルで4.46リラを超え、史上最安値を更新した。年初からでは18.2%の減価となっている。経常赤字拡大の主因は、2017年半ばからの金の輸入増、エネルギー輸入価格の上昇、内需の過熱による輸入増などによる貿易赤字の増大が挙げられる。また、資本流入も2017年第4四半期から鈍化している。中銀は、1~3月の観光収支が前年同期比31.7%増と改善していることを指摘しているが、経常赤字拡大によるリラ安には歯止めがかからなかった。中銀によると2017年の経常赤字は473億7,100万ドル(過去20年間で最大だったのは2011年の744億200万ドル)だった。

トルコへの対内直接投資は、テロなどによる治安リスクが後退した後も低迷が続いており、2017年は通年で前年比1.1%減、2018年の第1四半期も前年同期比39.1%減だった(添付資料の表2参照)。全体の66.6%を占めるEUからの投資は49.8%減だったが、2017年9月以降、オーストリアの製紙会社ハンブルガー・コンテナボードとノルウェーのソブリンファンドによる製造業、エネルギーセクターへの投資も発表されている。他方、トルコからの対外直接投資はオランダ向けを中心に前年同期比で66.1%増と伸びており、一部では「資本を逃避させているのでは」との指摘もある。

大統領発言に投資家や金融界は失望

エルドアン大統領は5月14日、ブルームバーグのインタビューに答え、6月24日の大統領選挙で勝利を収めることで、「責任をもって、より効果的な金融政策を打ち出せる」と述べた。さらに、中銀は独立した機構だが、大統領からも独立しているわけではないとし、「新しい憲法が発効すれば、行政の長である大統領の意向を無視することはできない」と強調した。経済への統制強化ともいえる発言で、選挙後に政府の中銀に対する利下げ圧力が和らぎ、より合理的な経済政策が実施されることを期待している投資家や金融界からは失望感が広がっているようだ。

エルドアン大統領は、金融アクセスを簡易化させて経済成長の誘因とすることで、国民経済の発展を望んでおり、高金利を「諸悪の根源」としている。しかし、高金利を誘因とした「外国からの資本流入」への依存が高いこともトルコ経済の特徴だ。格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は5月1日に、経済の過熱により、経常赤字およびインフレ高進への懸念が膨らみ、トルコ経済の不安定さが増していると指摘し、投資適格から2段階低い「BB-」に引き下げている。

(中島敏博)

(トルコ)

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