天然ガスの輸入を開始

(バングラデシュ)

ダッカ発

2018年05月07日

バングラデシュは自国で消費するエネルギーの多くを国産天然ガスに頼っている。近年、新ガス田は発見されているものの、規模の問題などがあり利用には至っておらず、可採埋蔵量は年々減少傾向にある。同国は、国産の石炭などの代替エネルギーの開発・利用を模索したが、2018年5月から液化天然ガス(LNG)の輸入を開始することになった。

報道によると、最初の輸入船はカタールから13万7,000立方メートルのLNGを運ぶ。バングラデシュ南東部のモヘシュカリ島付近に建設された国内初のLNGターミナル(FSRU:浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)から敷設された91キロのパイプラインを通じて、チッタゴン市にあるアンワーラ地区(工業地区)にガスを供給する予定だ。工業向けは5月25日ごろの供給開始となる。同ターミナルでの気化後の供給量は1日当たり5億立方フィートとなる見込みだ。

エネルギー輸入国へ

これにより、バングラデシュはエネルギー輸入国への第一歩を踏み出したことになるが、懸念されるのが貿易赤字の拡大だ。同国には輸出産業として縫製業があるが、付加価値の高い工業製品などを全て輸入で賄っており、貿易赤字が続いている。

一方、主に中東からの海外労働者の郷里送金により経常収支は黒字を維持していたものの、石油価格の下落に伴う送金額の減少により2016/2017年度(7~6月)は赤字に転落している。エネルギーの輸入がさらに加速すれば、自国通貨(タカ)安や外貨準備高の減少を招き、健全な経済を維持できなくなる可能性がある。

加えて、LNGの国際貿易は、タイムスケジュールが非常に厳しく管理されている点にも留意が必要だ。ある日系商社は、「FSRU内に使い切れないLNGが残っていると、施設へのガスの注入が遅れ、全世界の受給にまで影響が出てしまう」と指摘する。国内物流インフラが脆弱(ぜいじゃく)なバングラデシュにとって、LNGのよどみないオペレーションができるかが課題となる。

(古賀大幹)

(バングラデシュ)

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