アルゼンチン政府がIMFへ融資を要請

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2018年05月15日

ニコラス・ドゥホブネ財務相は5月10日、クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事と会談し、自国通貨(ペソ)の急落に伴う金融の安定化の一環として、危機が発生してIMFから融資を受ける必要が生じた場合、当該融資を前倒しで受けることができるハイアクセス・スタンドバイ取り決め(SBA)を希望したと発表した。

当初、経済ファンダメンタルズが良好で健全な政策を実施している国だけに適用される「フレキシブル・クレジットライン(FCL)で300億ドル」融資との一部報道があったが、現時点では貸し付け条件(コンディショナリティ)が伴うSBAで交渉が進められる予定だ。IMFも早急な支援決定を約束するなど、アルゼンチンとの合意に向けた協議に対して前向きな姿勢を見せている。

今後の交渉を通じて両者が合意するには、6週間程度の期間を要するとの指摘もある。また、融資額については未定ながらも、200億ドルや300億ドルといった報道がされている。さらに、アルゼンチン政府としては、世界銀行や米州開発銀行(IDB)からの支援に向けた検討を進めている。

ペソ安圧力がいつまで続くか

アルゼンチン政府の発表に対しては、5月9日に日本、米国、スペイン、ブラジル、チリがアルゼンチンの経済政策を支持することを表明。11日には中国政府もアルゼンチンのIMFへの支援要請を支持することを表明した。国内においてもマクリ大統領は10日、ペロン党(野党)所属の5州知事(コルドバ州、トゥクマン州、サンフアン州、チャコ州、エントレリオス州)と会談し、一部支持を獲得するなど、今回の動きに対するコンセンサス醸成に努めている。

当面はペソ安圧力がいつまで続くかが注目される。アルゼンチン・ペソは対ドルレートで23.20ペソ(5月11日中値)を記録し、年初来最安値を更新した。同通貨は2018年初比で20%を超える下落率となり、先週(5月7日の週)だけでも5%を超える下落率を記録した。IMFとの合意がない中で不透明感が存続しており、引き続きペソ安圧力がかかっている。

15日には約285億ドル相当のLEBAC(中央銀行短期債)が満期となり、借り換えの行方も今後の為替などに影響を与えるとの指摘も出ている。さらに議会では下院を通った公共料金「差し戻し」法案が来週後半から上院で審議開始。審議は2~3週間を予定されており、現状では可決する見通しとなっている。マクリ大統領が拒否権発動をすることが見込まれており、この行方も今後の為替などに影響を与えるともいわれている。

(紀井寿雄)

(アルゼンチン)

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