政権交代が実現、腐敗根絶目指す

(アルメニア)

欧州ロシアCIS課

2018年05月09日

首相交代をめぐり混乱が続いていたアルメニアで5月8日、政権交代が実現した。同日、国会で首相を選出する再投票が実施され、現在42歳で野党のニコル・パシニャン氏が首相に選出された。

パシニャン氏は国会で演説し、前政権への報復人事などは行わず、専門性を重視し政府機構の大規模な改革や人事刷新は行わないと表明。経済関連では、全ての希望者がビジネスを始めることができるようにし、法と権利を尊重し腐敗を根絶すると述べ、国外にいるディアスポラ(注)に対しても国内への積極的な投資を呼び掛けた。経済関連では、高い失業率を記録している地方への投資を優先し、ハイテク、農業、観光の3分野を中心に産業振興を進める方針を明らかにした。国の新しいイメージに対応し中小企業の発展に向けた環境を作るとしている。

ロシア重視は継続

対外政策では、ロシアとの関係を重視する現実路線を継続する。また、ユーラシア経済連合(EEU)の加盟国として引き続きとどまる。南北で国境を接するジョージアやイランとの関係の重要性や米国、インド、中国との協力強化にも言及。EUとは近い将来ビザ撤廃に向けた対話を開始するとしている。

パシニャン新首相は5月8日、ロシアのプーチン大統領と電話会談を実施。5月14日にロシア南部ソチで開催されるEEUサミットに出席する意向を伝え、個別会談で両国の戦略的関係の発展と地域統合の深化に向け議論することで一致した。

アルメニアでは4月13日、前大統領のセルジ・サルグシャン氏が首相に就任。同国では2015年に憲法が改正され、今回の大統領の交代から統治権限が首相に移されており(2018年4月10日記事参照)、大統領職を退いたサルグシャン氏が引き続き国政を担うことに一部の野党や国民が反発。首都エレバン中心部での大規模な反対行動の結果、4月23日にサルグシャン氏は首相辞任に追い込まれていた。パシニャン氏の所属政党「エルク」は当初ユーラシア経済連合(EEU)からの離脱を主張していたことから、ロシアや他のEEUの加盟国はアルメニアの動きを注視していた。

(注)国外のアルメニア移民社会。ロシア、米国などに100万人単位で存在している。

(高橋淳)

(アルメニア)

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