トラック輸送業界のスト、政府と一部業界団体合意も混乱続く

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年05月28日

ブラジル政府は5月24日夜、トラック輸送業界による抗議活動、ストライキを15日間中断するための合意内容を発表した。その内容は、ディーゼル油に対する特別財源負担金(CIDE)の課税をゼロに引き下げ、国営石油会社ペトロブラスが5月23日に発表した、15日間にわたるディーゼル油の卸売価格の10%引き下げ措置を30日間に延長、ディーゼル油の価格に関して調整期間の間隔を最低30日間とすること、本来、従業員給与に課せられる社会保障負担金(INSS)に関して、一定税率を法人売上高に課税する措置について陸上輸送業界に対し継続、などとなっている。

産業界への影響は徐々に深刻化

ただしこの合意には、ストライキを行っているトラック輸送業界団体全てが署名しているわけでない。例えば5月21日からのスト開始を呼び掛けていたブラジル・トラック輸送業者協会(Abcam)は合意に参加していない。同協会は25日付プレスリリースで、あくまで社会負担金(PIS/Cofins)の課税をゼロに引き下げることを要求し、ストライキを継続する方針を示している。

産業界への影響も徐々に深刻化している。ブラジル自動車製造業者協会(Anfavea)は5月24日、部品供給に支障が生じているため、国内主要自動車メーカーの一部工場が生産を停止していることを明らかにした。その中には日系メーカーも含まれる。

ブラジル動物性プロテイン協会(ABPA)は25日、政府と業界団体の合意以降も物流に支障が生じ、畜産農家では家畜飼料不足が懸念されるとしている。また首都ブラジリアを含む国内空港の一部では、飛行機の給油ができず、運航キャンセルが発生する事態となった。

5月24日から25日にかけて、サンパウロ市内の一部スーパーでも品不足を伝える張り紙が増えているほか、ガソリンスタンドに給油を求める車が列をなす光景が見られた。公共交通機関であるバスや清掃車の運行削減など行政サービスにも影響が生じており、サンパウロ市は25日、非常事態宣言を出し、危機対応委員会の設置を発表している。トラック輸送業者は一部の幹線道路を封鎖して抗議活動を行っており、市民生活への影響も懸念される。

(二宮康史)

(ブラジル)

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