サムスン電子、ロシアのデジタル・IoT分野で協力を拡大

(ロシア、韓国)

欧州ロシアCIS課

2018年05月25日

韓国のサムスン電子は5月17日、ノボシビルスク工業大学と、翌18日には高等経済学院(HSE、モスクワ)と協力協定を締結した。同社は、ロシアで展開する「IoT(モノのインターネット)アカデミア」プログラムをこれらの大学でも進めると発表した(注)。

同プログラムは2017年9月から開始したもので、当初はパイロット事業としてモスクワ物理工業大学(MFTI)、モスクワ工科大学(MIREA)の2校で実施された。サムスン電子は2018年4月、これを上記2校を含む全国10の大学に拡大すると発表。2018年9月からは、モスクワ、サンクトペテルブルク、カザン(沿ボルガ地域)、エカテリンブルク、チェリャビンスク(以上、ウラル地域)、ノボシビルスク、トムスク(以上、シベリア地域)、ヤクーツク(極東地域)の大学で、同アカデミアが開講される。

「IoTアカデミア」はロシアで、IIoT(インダストリアルIoT)人材を育成するプログラム。同社のウェブサイトによると、対象者は大学3~4年生で、Javaなどのコンピュータ言語やシステム制御、電気工学などの基礎知識が必要。履修期間は1年(2学期制)で受講は無料。同社は、同社製IoTモジュール「ARKTIK」が搭載されたコンピュータなどを大学側へ無償で提供するほか、教師向け講座(マスターコース)を実施する。教師や学生がそれら機材を使用することで、将来的にロシア国内でARKTIKの普及を狙う。同社担当部長のセルゲイ・ぺブネフ氏は、プログラムの目的を「デジタルの未来に向け、IIoT含むIT分野を当社とともに発展させる技術者を育てること」と話す。

ロシア政府は現在、国民生活と生産性の向上のためデジタル経済化を中心政策に据えている(2018年1月11日地域・分析レポート参照)。この動きを受け、各外資企業は将来の市場取り込みのため、高等教育機関へのアプローチを積極的に進めている。米国のシスコ・システムズは、ロシア国内に「シスコ・アカデミア」を展開。IoT分野もプログラムに含まれ、 2017~2018年の学期には約2,500人が学ぶ。中国の大手通信機器メーカー中興通訊(ZTE)は、モスクワ工業大学、モスクワ通信・情報工業大学と提携。欧州最大のソフトウエア会社SAPは、ロシアで70以上の高等教育機関に自社製品の提供などを行なっている。

(注)HSEでは傘下のモスクワ電子数学大学で実施する。

(高橋淳)

(ロシア、韓国)

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