ベトナム製耐食鋼と冷延鋼板へのAD・CVD課税を最終決定

(米国、中国、ベトナム)

ニューヨーク発

2018年05月31日

米商務省は5月21日、耐食鋼と冷延鋼板のベトナムからの輸入に対して、アンチダンピング(AD)税と補助金相殺(CVD)税を賦課することを最終決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。商務省はこれら製品の中国からの輸入に対して、2016年7月にAD・CVD税を賦課している(注1)。今回の措置は、耐食鋼と冷延鋼板の価額の大部分を占める中国製の炭素熱延鋼板と冷延平鋼がベトナムに輸入された後、耐食鋼と冷延鋼板に加工されて米国に輸入されているとして、上述の中国製耐食鋼と冷延鋼板に対するAD・CVD措置の実質的な迂回措置になっていると商務省が判断したもの(注2)。

米商務省が中国製鉄鋼製品の迂回輸入を認定

商務省は2017年12月5日に、今回の決定の仮決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行っている。商務省はこの仮決定に基づき、上記の迂回輸入を防ぐため、中国製の炭素熱延鋼板と冷延平鋼を使用した耐食鋼と冷延鋼板に対して、調査開始時点までさかのぼって関税を課している。この追加関税の徴収額は、これら製品の中国からの輸入に課されているAD・CVD措置をベースにしており、耐食鋼はADが199.43%でCVDが39.05%、冷延鋼板はADが199.76%でCVDが256.44%となっている。今回、措置が最終的に確定したことで、既に支払った追加関税の払い戻しは行われず、今後も引き続きAD・CVD税が課されることになった。

なお、このAD・CVD税の迂回調査は、アルセロール・ミタル、ニューコア、USスチール、AKスチールなど米国の主要製鉄メーカーの要請により、商務省が発動したもの。

中国製品を使用していない場合も証明書が必要

今回の措置は中国製の炭素熱延鋼板と冷延平鋼を使用している耐食鋼と冷延鋼板の輸入に限られるが、中国製品を使っていない耐食鋼や冷延鋼板の輸入が今回のAD・CVD税の適用を免除されるためには、これら製品をつくるための基材が中国以外でつくられたことを示す証明書が、輸出者、輸入者ともに必要になる(注3)。

(注1)耐食鋼の対中関税賦課については2016年7月25日の官報(ADPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)CVDPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))、冷延鋼板に対する対中関税賦課については同年7月14日の官報参照(ADPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)CVDPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

(注2)1930年通商法781条(U.S.C.1677jPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))は、発動済みのAD・CVD措置の迂回防止策として、第三国からの輸入も以下の条件を満たす場合は措置の対象に含める権限を商務省に与えている。(1)AD・CVD措置の対象製品と同様の製品が米国に輸入されていること、(2)当該製品が米国に輸入される前の段階で、AD・CVD措置の対象国の製品を使って第三国で完成(completed)または組み立て(assembled)られていること、(3)この第三国での完成および組み立てが重要なプロセスでないこと、(4)米国に輸入される完成品の生産に使われたAD・CVD措置の対象国の製品がその完成品の価額の大部分(significant portion)を占めること。

(注3)必要な証明書の詳細は、2018年5月23日付の官報(耐食鋼PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)冷延鋼板PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))参照。

(鈴木敦)

(米国、中国、ベトナム)

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