スコットランド議会、EU離脱法案への合意を否決

(英国)

ロンドン発

2018年05月18日

スコットランド議会は5月15日、英国がEUを離脱する際にEU法を国内法に置き換える「EU(離脱)法案」に対する合意決議を、93対30の反対多数で否決した。与党スコットランド国民党に加え、労働党、自由民主党、緑の党の各野党がそろって反対。賛成したのは最大野党の保守党所属議員のみだった。

中央政府から委譲され、各自治政府が権限を持つ分野のうち、遺伝子組み換え作物、漁獲割り当て、環境関連規制など24項目の制度については離脱後に中央政府に移管されると、同法案は規定している。英国全体で統一の制度運用が必要という点ではスコットランド、ウェールズ両自治政府は合意している。

しかし、英国政府が最終決定権を持つことに対して両自治政府は反発し、法案に反対していた。英国政府はそれらの制度を変更する際に各自治政府の合意を得ることや、離脱から7年後には各自治政府に委譲することを提案するなど妥協案を示していたが、受け入れられなかった。

メイ政権はこのまま採決を目指すとの見方も

現地報道によると、テレーザ・メイ首相は5月16日、スコットランド議会の決定について失望を表明。しかし、今回の否決は法的拘束力を持たないため、英国政府が「EU(離脱)法案」を成立に持ち込むことは可能で、メイ政権はこのまま採決を目指すとの見方が強い。

ただし、自治政府の合意なしに権限の移譲事項に関する法案を成立させた前例はなく、実行すれば自治政府・議会から強い反発を招くのは必至だ。スコットランドでは5月5日、独立支持派による数万人規模のデモが行われており、2014年に否決された独立を目指す動きは衰えていない。合意なしに離脱法案の成立を進めれば、こうした動きに拍車を掛ける可能性がある。

一方で、今回の合意否決の影響は限定的との見方もある。BBCスコットランド編集長のサラ・スミス氏は、スコットランド議会が初めて中央政府の法案に反対したことは注目に値すると指摘しつつ、法案が対象とする各事項がスコットランドの有権者の生活に与える影響は少なく、さほど注目されないと分析している。しかし閣内、議会とも強力な反対勢力を抱え、離脱方針決定の打開策が見いだせないメイ首相にとって好ましくない材料がまた1つ増えたことは間違いない。

(宮崎拓)

(英国)

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