欧州委、対米報復措置は依然として選択肢の中

(EU、米国)

ブリュッセル発

2018年05月07日

欧州委員会は5月3日付の公開文書で、米国政府による鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税措置へのEUの対抗措置として検討している、対米・追加関税賦課品目リストについて言及し、米国との通商関係の再均衡(リバランス)のために活用する可能性を示唆した。欧州委はこれ以上の事態の悪化や米欧双方での経済的な悪影響を抑止すべきとの考えを強調したが、同時に貿易相手国が不当な手段で、欧州企業や市民の権益を脅かす事態は看過できないとの姿勢を明らかにした。

恒久的適用除外を望む欧州産業界

米国は5月1日、EU原産の鉄鋼・アルミニウムに対する追加関税賦課の暫定適用除外措置を延長する方針を明らかにしたが、6月1日までの期限付きであり、恒久的適用除外が認められなかったことについて欧州側に不満がくすぶっている。ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は5月1日付の声明で、EUに対する適用除外延長について、「明るい材料だが、産業界には予見可能性と安定性が必要」と指摘、対米交渉を通じて恒久的適用除外を勝ち取るよう欧州委員会に求めた。

また、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)のアクセル・エガート会長も5月1日、「一方的な措置を発動すれば、相互の通商関係に悪影響を及ぼすことを米国に認識させる必要があり、そのための欧州委の取り組みを支援する」と語った。このほか、欧州アルミニウム協会は(6月1日までの)暫定適用除外は、中国の過剰供給力の拡大によって窮地に追い込まれたアルミニウム産業界の救済にはならないとの声明を発表した。

なお、今回の欧州委の公開文書は、欧州議会のマイレッド・マクギネス副議長(アイルランド選出)が4月11日付で欧州委に提出した意見書に対する回答として出状されている。マクギネス副議長は、EUが米国産バーボンを追加関税賦課品目リストに加えた場合、米国の報復措置を呼び、EU側が巨額の貿易黒字を抱える米国・蒸留酒市場を失うリスクを指摘していた(2018年4月16日記事参照)。

(前田篤穂)

(EU、米国)

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