個人所得税減免制度の適用期間が5年間に短縮へ

(オランダ)

アムステルダム発

2018年04月27日

オランダ財務省は4月20日、2019年1月1日から「30%ルーリング」の適用期間を現行の8年から5年へ短縮する案を国会に提出した。

30%ルーリングは1964年に制定され、(1)高度な能力を持つ国外居住者のオランダへの受け入れ、(2)魅力的で競争力のあるビジネス環境の維持、(3)控除手続きなどの簡素化による行政コストの削減、を目的とし、過去24カ月に、オランダ国内および国境から150キロ以内の国外で16カ月以上就労していない国外居住者を対象に、最大30%の所得控除ができる個人所得税の減免制度だ。条件を満たす国外居住者は国籍を問わず税務当局に申請すれば認可される。2015年時点で約5万6,000人が利用しており、毎年約7%増加している。

会計検査院は2016年5月、政府が同制度の適用により意図している、高度な能力を持つ国外居住者のオランダへの受け入れ効果、控除手続きなどの簡素化により行政コストの削減効果が不明確で、見直しが必要との報告書を国会へ提出した。これを受け野党は制度廃止を含めて見直しをするための国会審議を求めていた。

財務省は2017年7月に同制度の評価を調査機関に委託したところ、制度開始以降、行政コストは約1,500万~6,500万ユーロ削減され、高度な能力を持つ国外居住者のオランダへの受け入れに加え、それらの労働者が企業や文化などに良い効果をもたらしているとの報告を受けた。一方で、適用条件の見直しについて、(1)適用期間を8年から5年へ短縮、(2)就労前の居住地とオランダ国境との距離制限を現行の150キロ以内から拡大、(3)所得が10万ユーロを超える移住者への減税額上限の設定、などが提案された。

財務省は調査機関からの提案を検討し、適用期間を8年から5年へ短縮し、2019年1月1日から適用する案を国会に提出した。この短縮により約3億ユーロの財政負担が抑えられるとしている(表参照)。

表 30%ルーリング制度の変更点

見直し案では、2019年1月1日から適用期間が5年に短縮されることになるため、8年の減税措置を見越して住宅ローンを組んでいる人への影響が大きいなどの批判が出ている。駐在員の約80%は5年以内に帰国しているが、30%ルーリングの適用期間は累積で計算されるため、2回目の駐在をする場合に影響が出る可能性があるとみられている。今後、国会で審議が継続されるが、オランダの産業・労働者団体は政府案に反対の意を表明している。

(大滝泰史)

(オランダ)

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