特許法の有用性に関する最高裁の判断を評価-2018年外国貿易障壁報告書(カナダ編)-

(米国、カナダ)

米州課

2018年04月04日

米通商代表部(USTR)が3月30日に発表した2018年版外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、カナダに関する記述は前年と同様の8ページだった。2017年の米国の財の対カナダ貿易赤字は、前年比59.7%増の175億ドルと大幅に増加した。カナダは米国最大の財の輸出相手国で、2017年の輸出額は2,825億ドルと5.9%増加したが、カナダからの輸入額も3,000億ドルと8.0%増加した。

障壁の対象には、貿易の技術的障壁(TBT)、輸入政策、国内支援措置、政府調達、知的財産権保護、サービス障壁、投資障壁、デジタル貿易障壁が含まれた。

前年に比べて改善した点として、特許法第2条の発明の定義における有用性につき、これまでの下級裁判所の判断は「健全な予測(sound prediction)」の可否が要件となっていたため、多くの医薬品特許が無効とされていたが、カナダ最高裁が2017年7月に、「不健全」としたことを評価した。

新たな障壁として金融サービスやデジタルメディア政策などを指摘

一方、2018年版では、金融サービス、デジタルメディア、包装済み食品の栄養成分表示が障壁として新たに盛り込まれた。金融サービスでは、カナダでの金融事業に関連する全てのデータの国内保存を義務付けおり、USTRはデータ保管義務をやめるようカナダ政府に求めている。

デジタルメディアでは、メラニー・ジョリー民族遺産相が2017年9月にカナダの文化・クリエイティブ産業育成のためのビジョン「クリエイティブ・カナダ」を発表したが、その政策枠組みの中にグローバル・インターネット企業との合意に基づくカナダ番組の制作やカナダ人タレントの育成などが含まれていることから、この政策がデジタル貿易の障壁とならないよう監視するとしている。

また、包装済み食品の栄養成分表示に関して、カナダ政府は過剰摂取による健康被害が懸念されるナトリウム、糖類、飽和脂肪酸などの成分量が一定値を超える場合に、注意喚起表示を義務化しようとしていることを取り上げた。

(中溝丘)

(米国、カナダ)

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