CPTPP発効により対日輸出増加を期待するカナダ農業界

(カナダ、米国、日本)

トロント発、米州課

2018年04月19日

カナダ連邦政府を含む11カ国が3月8日、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に署名したことを受け、カナダ連邦政府は、協定が発効した場合の効果について業種や州ごとに検索できるウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開した。

それによると、ほとんどの対日主要輸出農林水産品で、関税の削減もしくは撤廃が約束されることになった(表1参照)。同国の2017年の対日輸出額は118億カナダ・ドル(約1兆30億円、Cドル、1Cドル=約85円)で、うち農林水産品は56億Cドルと全輸出額の47.6%を占める。

表1 カナダの対日主要農林水産輸出品目と関税率、CPTPP合意内容

菜種油などが伸びる可能性も

一連の関税削減や撤廃案に関し、主要輸出品目の業界団体は総じて歓迎の意を示した。最大の対日輸出品目である菜種の業界団体、カナダ菜種協会は、「CPTPPが発効されれば、菜種油やミール(油粕)の関税が撤廃され、付加価値の高い商品の市場が開かれる」とコメント外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますする。また、カナダポーク協議会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます西部カナダ小麦生産者協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますカナダ林産品協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも支持を表明しており、カナダ林産品協会のデレク・ナイバーCEOは「林産業に対して根拠のない保護主義的政策を発動する米国以外の市場を確保するため、市場の多角化に注力している」として、米国以外の市場開拓に積極的な姿勢を示した。

約18億Cドル増の対日輸出拡大を見込むも、米国は日本との貿易協議を開始へ

グローバル連携省ではCPTPP発効後の経済効果の試算結果をウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開している。CPTPP発効により、日本への輸出は約18億Cドル増加するとしており、米国を含むTPP12が発効した場合の経済効果試算より、約4億Cドル上回っている(表2参照)。米国不在のCPTPPでは、カナダ産の豚肉や牛肉は対日輸出競合先である米国産よりも価格競争力が高まり、豚肉は約6億Cドル増、牛肉は約4億Cドル増、林産品は約2億Cドル増を見込む。

表2 TPP12とCPTPPが発効した場合と未発効の場合を比べた2040年のカナダの輸出額の変化(推計値)

一方、TPP離脱により不利な立場に立たされる米国の農畜産団体はトランプ政権に対し、TPP復帰を求めており、トランプ米大統領は4月12日、TPP復帰の検討するようライトハイザー米通商代表部(USTR)代表や米国家経済会議(NEC)のローレンス・カドロー委員長に指示。さらに、4月17~18日に米国フロリダで開催された日米首脳会談で、両国は自由で公正かつ相互的な貿易取引に向けた協議の開始を発表するなど、米国の対日輸出拡大への動きが強まる中、カナダが試算どおりの輸出効果を実際に享受できるかは今のところ不透明な状況だ。

(飯田洋子、中溝丘)

(カナダ、米国、日本)

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