税制改革などにより債務残高急増の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2018年04月11日

米国議会予算局(CBO)が4月9日に公表した予算および経済見通しの年次報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(The Budget and Economic Outlook:2018 to 2028)によると、2018年度の連邦政府の財政赤字は、2017年度の6,650億ドル(GDP比マイナス3.5%)から拡大し、8,040億ドル(GDP比マイナス4.0%)になるとの見通しを示した。赤字の拡大傾向はその後も続き、2020年度には1兆ドル(1兆0,080億ドル)に達するとともに、2028年度には1兆5,260億ドル(GDP比マイナス5.1%)まで拡大するとした。

2017年6月に公表された前回見通しと比較すると、今後10年間(2018~2027年度)で合計1兆5,840億ドル(年平均1,580億ドル)と、大幅に赤字が拡大する姿となっている。また、赤字が1兆ドルに到達する時期についても、2022年度から2020年度に2年前倒しされた。CBOの声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2017年末に成立した税制改革法、2018年初旬に成立した2018年度予算などの拡張的な財政政策の実施が、主な収支悪化要因になったとしている。

債務残高についても、2017年度末の14兆7,000億ドル(GDP比76.5%)から着実に増加し、2028年度末には28兆7,000億ドル(GDP比96.2%)に達するとした。声明文によると、「この割合は1946年度(106.1%)以降で最も大きく、過去50年間の平均(40%程度)と比べても2倍以上の水準」と指摘した。

2018年・2019年は潜在成長率を上回るペースの成長

経済成長率(注)の見通しは、2018年が3.3%、2019年が2.4%とした。労働力人口の伸びの鈍化などを背景として、長期的な潜在成長率(2018~2028年までの成長率の予測平均)は1.9%程度と、前回(2017~2027年平均:1.8%程度)から大きく変更していないが、2017年下半期にみられた個人消費や設備投資の強い勢いに加えて、連邦政府の歳出増による経済押し上げ効果などを通じて、今後2年間は、潜在成長率を上回る成長が実現されるとした。2020年以降は、潜在成長率並みの2%弱の成長にとどまる見通しとなっている。

CBOディレクターのキース・ホール氏は「米国経済は既に景気サイクルの頂点に近い状態におり、こうした中で、さらに財政赤字を拡大し、債務残高を増加させる政策を実施すると、(物価や金利の上昇を通じて)一段の財政状況の悪化につながる可能性がある」と指摘した。

(注)10~12月(第4四半期)の前年同期比ベース。

(権田直)

(米国)

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