吉林省、2017年のGRP成長率は5.3%
(中国)
大連発
2018年04月03日
吉林省統計局によると、同省の2017年通年の域内総生産(GRP)実質成長率は5.3%で1兆5,288億9,400万元(約25兆9,900億円、1元=約17円)となった。省政府は、好調なサービス業分野での消費を促し、氷雪産業など新たな重点産業の育成を進める。
サービス業が成長を牽引、産業高度化に向けた動きも
第一次産業が前年比3.3%増の1,429億2,100万元、第二次産業が3.9%増の7,012億8,500万元、第三次産業が7.5%増の6,846億8,800万元となった。
一定規模以上の工業付加価値額は前年比5.5%増で、うち自動車製造業の付加価値額が13.9%増と伸びに寄与した。また、第三次産業は同省の2017年のGRPの44.8%を占め、前年から2.3ポイント上昇した。吉林省統計局は、第三次産業が同省の経済成長率を3ポイント上昇させたと指摘している。
投資面では固定資産投資総額が前年比1.4%増の1兆3,130億9,000万元となった。工業投資は5.7%減、不動産開発投資も10.5%減と落ち込んだものの、2017年1~9月の累計値と比べいずれもマイナス幅が縮小した。貿易総額は3.0%増の1,254億1,400万元、うち輸出が8.2%増の299億9,200万元、輸入が1.5%増の954億2,200万元だった。消費面では、社会消費品小売総額が7.5%増の7,855億7,500万元、都市部住民1人当たりの平均可処分所得額が6.7%増の2万8,319元だった。
吉林省の景俊海代理省長は1月26日の政府活動報告において、「吉林省の経済発展は安定しながら好転している。GRPの額は2012年から2017年にかけ4,000億元増加した」と同省の経済成長に確かな手応えを示しつつも、「旧工業基地において蓄積された構造的問題が依然あり、改革の深化と構造改革が大きな課題だ」と今後のさらなる改革の必要性を強調した。
項目 | 1~3月 | 1~6月 | 1~9月 | 通年 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
金額 |
前年
同期比 |
金額 |
前年
同期比 |
金額 |
前年
同期比 |
金額 | 前年比 | |
域内総生産(GRP) | 2,683.4 | 5.9 | 6,124.2 | 6.5 | 9,970.6 | 5.7 | 15,288.9 | 5.3 |
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127.4 | 2.8 | 280.5 | 2.9 | 737.8 | 3.2 | 1,429.2 | 3.3 |
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1,453.8 | 4.8 | 3,387.8 | 5.2 | 5,216.4 | 4.7 | 7,012.9 | 3.9 |
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1,102.3 | 8.1 | 2,455.9 | 9.0 | 4,016.4 | 7.6 | 6,846.9 | 7.5 |
一定規模以上の工業付加価値額 | 1,562.7 | 4.9 | 3,167.2 | 5.8 | 4,651.4 | 5.4 | ― | 5.5 |
固定資産投資総額 | 455.7 | 6.0 | 5,258.9 | 2.4 | 10,636.8 | 0.0 | 13,130.9 | 1.4 |
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― | ― | ― | ― | ― | ― | 910.1 | △ 10.5 |
社会消費品小売総額 | 1,774.6 | 9.5 | 3,684.4 | 8.8 | 5,675.0 | 8.1 | 7,855.8 | 7.5 |
消費者物価指数(CPI)上昇率 | ― | 1.7 | ― | 1.5 | ― | 1.5 | ― | 1.6 |
都市部住民1人当たり平均可処分所得(元) | 7,281.0 | 6.8 | 14,138.1 | 6.7 | 21,005.1 | 6.8 | 28,319.0 | 6.7 |
貿易総額 | 328.8 | 16.7 | 633.6 | 4.8 | 948.9 | 5.1 | 1,254.1 | 3.0 |
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72.1 | 15.6 | 147.1 | 10.9 | 220.9 | 7.5 | 299.9 | 8.2 |
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256.7 | 17.1 | 486.5 | 3.1 | 728.0 | 4.4 | 954.2 | 1.5 |
対内直接投資額(実行ベース、億ドル) | 5.0 | △14.9 | 13.0 | 4.7 | 18.9 | 3.5 | ― | ― |
(注)数値はいずれも速報値。
(出所)吉林省統計局公表資料
2018年の吉林省の重点政策
吉林省は2018年の政策目標として、10項目の重点政策を掲げている(表2参照)。企業活動に関係する重点政策は、主に以下の4点となっている。
第1に、供給側(サプライサイド)の構造改革だ。国有企業の債務の削減や過剰生産の解消に引き続き取り組むとともに、産業の高度化を図る。自動車、石油化学、農産品加工など伝統的産業の高度化を推進し、医療・ヘルスケア、設備製造、光電情報などの優位な産業を発展させる。また、ビッグデータを活用したインターネットとハイエンド製造業の融合の推進による新興産業の育成や、氷雪産業(スキーやスケートなど氷雪に関する観光業)などの新たな重点産業の育成を図る。
第2に、消費と有効な投資の拡大。製品の質やサービスを軸に新たな需要を創出し、高齢者、ヘルスケア、電子商取引(EC)、コンテンツ産業などで消費を促す。さらに、水利、鉄道、地下鉄などのインフラ投資の推進に加え、スマート製造・グリーン製造など、イノベーションに関する投資を促す。
第3に、イノベーション促進と人材確保だ。研究機関、高等教育機関、企業における研究開発を推進し、政府と企業が連携してイノベーションに取り組むことを推奨する。イノベーションを担う高度人材の育成と獲得を図り、他地域からの著名な学者や企業の誘致を行う。
第4は、改革開放の全面的な深化と推進だ。国有企業の再編、民間中小企業の育成、金融分野における改革を推進しながら、対外開放の措置として、一帯一路沿線国との協力(長春・吉林・図們江戦略、辺境貿易の促進、国内外からの投資誘致)を促進するとした。同時に、吉林省への企業定着のため、工商登記の手続き全体のオンライン化など、ビジネス環境の改善に取り組むとしている。
政府活動報告で、2018年の吉林省のGRP成長率の目標が6%前後に設定された(表3参照)。省政府は、好調なサービス業における消費を促進し、氷雪産業など新たな重点産業の育成を進めることでさらなる経済成長を見込む。
No | 項目 | 主な内容 |
---|---|---|
1 | 供給側(サプライサイド)の構造改革 |
|
2 | 消費と有効な投資の拡大 |
|
3 | イノベーション促進と人材確保 |
|
4 | 改革開放の全面的深化と推進 |
|
5 | 農村振興戦略の推進 |
|
6 | 区域総合発展戦略の推進 |
|
7 | リスクマネジメント |
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8 | 貧困扶助の推進 |
|
9 | 環境保全と管理 |
|
10 | 民生改善と確保 |
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(出所)吉林省2018年政府活動報告
項目 | 2018年 | 2017年 | |
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目標 | 目標 | 実績 | |
実質GRP成長率 | 6%前後 | 7%前後 | 5.3% |
一定規模以上の工業付加価値額(増加率) | 6%前後 | 6.5%前後 | 5.5% |
固定資産投資額(増加率) | ― | ― | 1.4% |
社会消費品小売総額(増加率) | ― | 9.5%前後 | 7.5% |
貿易総額(増加率) | ― | ― | 3% |
消費者物価指数(上昇率) | 3%前後 | 3%前後 | 1.6% |
新規就業者数(都市部) | 45万人 | 50万人 | 53.2万人 |
失業率(都市部、登録) | 4.5%以下 | 4.5%以下 | ― |
都市・農村の住民収入(増加率) | 経済成長率と同程度 | 経済成長率と同程度 | 経済成長率を上回った |
(出所)吉林省政府活動報告(2017年および2018年)
(匂坂拓孝)
(中国)
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