再生可能エネルギー指令を注視-2018年外国貿易障壁報告書(EU編)-

(米国、EU)

米州課、欧州ロシアCIS課

2018年04月04日

米通商代表部(USTR)が3月30日に発表した2018年版外国貿易障壁報告書(NTE)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、引き続きEUのREACHや新エネルギー政策についての懸念を表明している。

2017年の米国の財の対EU貿易赤字は、前年比3.2%増の1,510億ドルだった。EUは米国最大の財の輸出相手国で、2016年の輸出額は2,835億ドルと前年比5.2%増加し、EUからの輸入額は4,349億ドルと4.5%増加した。2018年版NTEにおいて、EUに関する記述は前年と同様の50ページ程度で、貿易の技術的障害(TBT)/衛生植物検疫措置(SPS)、サービスに対する障壁、投資に対する障壁、デジタル貿易に対する障壁等幅広い分野における障壁を指摘している。

特に、2016年11月に欧州委員会が温暖化対策の一環として発表した「再生可能エネルギー指令」の改正案について挙げている。これは、欧州委員会が「2030年までにEUのエネルギー効率を30%に高める」という省エネ目標を掲げ、一連の法案をまとめて「エネルギー政策パッケージ」として発表したもの。2018年中ごろには立法化される見込みだ。

木質ペレットのEU向け輸出に懸念も

米国は、この法案の木質ペレットの対EU輸出への影響を懸念している。2017年に米国からEUへの木質ペレット輸出額は6億5,500万ドルだった。米国の木質ペレットの原材料が再生可能エネルギー指令の基準を満たさない場合は、今後輸出に影響を与えることになる。

また、米国の食肉の原産国表示要求(COOL)規制に対しては、米国内でも意見が分かれているが、カナダやメキシコも反発しており、これに対応するEUの法令を見守っている。

農業分野では、米国は以前から欧州委員会の遺伝子組み換え(GE)作物の承認の少なさに不満を漏らしていたが、2017年に大豆、コーンなど11品目を追加したことを歓迎した。

また、例年同様、次の項目も含まれた。

  • 不透明で効率性に欠く規制開発プロセス【特にREACH、CLP規則などの化学品規制、毎年見直されるREACHの実質評価プロセス(ローリング行動計画:CoRAP)、高懸念物質(SVHC)の「リスクマネジメントオプション分析(RMO)」など】
  • 機械、玩具、医療機器などの工業製品ごとに定められる、EU統一規格であるEN規格(整合規格)による技術的要件を満たしていることを示すCEマーク(中でも特に、CEマークの表示要件の1つである、EUによる適合性評価の枠組み)
  • EUの民生用原子力技術関連ルール(米国の民生用原子力安全基準を満たした技術へ適用すべきではない)

(松岡智恵子、根津奈緒美)

(米国、EU)

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