四川省、2025年までにPM2.5濃度を16%超引き下げへ

(中国)

成都発

2018年04月05日

四川省大気水質土壌汚染防止指導グループ(中国語では四川省大気、水、土壌汚染防治三大戦役領導小組弁公室)は2017年10月、「四川省青空防衛行動方案(2017~2020年)」を公表した。同方案では、2020年までに同省のPM2.5年平均濃度を16%超引き下げるとしている。

汚染企業の廃業や汚染多排出車の廃棄を推進

四川省大気水質土壌汚染防止指導グループは2017年10月、「四川省青空防衛行動方案(2017~2020年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、方案)を公表した。方案によると、2016年に同省の大気中の主要汚染物質濃度は全体的に改善した。特に2016年の同省におけるSO2(二酸化硫黄)、NO2(二酸化窒素)、PM10(浮遊粒子状物質)の年平均濃度は2013年比でそれぞれ50%、16.7%、13.8%減少した。

2016年のPM2.5(微小粒子状物質)の年平均濃度は、2015年比でほぼ横ばいの1立方メートル当たり46.4マイクログラムだったが、同省の21市・自治州のうち、広元市、涼山イ族自治州、甘孜チベット族自治州、アバ・チベット族チャン族自治州、攀枝花市の5市・自治州が中央の環境保護部が定めるPM2.5年平均濃度の基準(35マイクログラム)を達成した(注1)。

同方案では、今後の主要目標として、2020年までに同省のPM2.5年平均濃度を2015年比で16%以上低下させ、SO2、NOX、VOCs(揮発性有機化合物)の排出総量を2015年比でそれぞれ16%、16%、5%引き下げることが打ち出された。また、年間の大気優良日数の比率を84%以上とし、大気の質を持続的に改善させるとしている。重点地域は、成都平原地区(注2)、川南地区(注3)、川東北地区(注4)で、3地区は、それぞれの産業構造の特性および、地域の状況に応じた実施方案を策定した。

具体的な取り組みとしては、産業政策と現地の発展計画に合致せず、関連手続きを経ておらず、安定的に排出基準を満たしていない環境汚染企業(中国語では「散乱汚」企業)への総合的な対策を推進することとした。2017年末までに、成都平原地区の「散乱汚」企業の廃業を完了させ、2018年末までに、川南地区および川東北地区における「散乱汚」企業の廃業を完了させる。また、2018年末までに、鉄鋼業、セメント業、石油化学業など重点VOCs排出産業の汚染排出許可証の発行を終了させる。このほか、汚染多排出自動車の更新および、廃棄を加速させること、重度汚染天候時に自動車の走行を制限する範囲を拡大すること、環境に配慮した産業発展を推進することなどが盛り込まれた。

環境に配慮した発展を追求

四川省では過去数年、大気汚染が深刻化している。2015年11月から12月にかけては、同省の多数の地域でPM2.5の農度が非常に高くなり、最大値が1平方メートル当たり400マイクログラムを超過する地域もあった。省都の成都市では、高速道路や空港の閉鎖、呼吸器系疾患患者の急増、小・中学校の休校などの事態が相次いだ。こうした深刻な大気汚染を受け、同省は、中央の環境保護部の「大気汚染防止行動計画」(2013年9月公布)を基に、産業構造の調整、最適化や、重度汚染天候時に適切な対応を取ること、などを実施した。同省は、2017年から、大気汚染が深刻化する冬場に向けて規制をさらに厳しくし、環境基準を満たさない生産工場を閉鎖させるとしている。

同省の南に位置する攀枝花市は、中国西部でも有数の重工業都市で、鉄や、チタン、バナジウム、石灰石などの鉱物資源を豊富に埋蔵している。同市のチタン埋蔵量は中国全体の63%を占め、バナジウム混合鉄鉱埋蔵量は93%を占めている。過去数年、同市は環境に配慮した発展という理念を徹底し、温暖な気候や日照時間の長さなどを生かして、シルバー産業や、ヘルスケア産業、旅行産業などの新産業を育成する反面、小規模の鉱山や製鉄企業の廃業も推進している。

四川省環境保護庁は2017年6月4日、「2016年四川省環境状況公報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(以下、公報)を公布した。公報によると、2016年の同省の大気優良日数は287日で、優良日数比率は79%に達した。また、四川省環境保護庁の趙楽晨総工程師によると、2017年1~9月における、同省のPM2.5およびPM10の平均濃度は前年同期比で7.9%、5.5%低下し、成都市のPM2.5およびPM10の平均濃度はそれぞれ8.2%、9.8%減少するなど、大気の環境は引き続き改善傾向にある(「四川日報」2017年11月3日、)。一方、同省に進出した外資系企業の調達先となっている中国企業の工場が環境規制違反で操業を停止させられることで、部品や原材料の調達が滞り調達価格が上昇するなど、投資環境および企業経営に対して影響をもたらす可能性もあるとみられる。

(注1)WHOが定めるPM2.5の年平均値は1立方メートル当たり10マイクログラムであり、米国の12マイクログラム、日本の15マイクログラムと比べても、中国の基準は緩いものになっている。

(注2)成都平原地区とは、成都市、徳陽市、綿陽市、眉山市、資陽市、楽山市、遂寧市、雅安市を指す。

(注3)川南地区とは、自貢市、内江市、宜賓市、瀘州市を指す。

(注4)川東北地区とは、南充市、達州市、広安市、巴中市、広元市を指す。

(王植一)

(中国)

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