第4次産業革命に向けた支援施策を公表

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年04月04日

ブラジル政府は、製造業をはじめとする国内産業の生産性向上や高度化を図ることを目的として「第4次産業革命に向けたブラジル・アジェンダ4.0」を公表した(3月14日)。同アジェンダは、研究開発に対する助成、設備導入に対する低利融資、人材育成、先端機器の輸入に関する障壁低減、規格の見直しなどを含む包括的な支援施策パッケージとなっている。

ブラジルでは自動車産業や繊維産業をはじめとする製造業やエネルギー産業などの競争力強化が長年の課題だった。このため、モノのインターネット(IoT)など新たな技術的な潮流を取り込んだイノベーション促進を後押しするため、2017年12月5~6日に政府主催による初の第4次産業革命に関する会議を開催した。同会議では、商工サービス省(MDIC)が第4次産業革命対応のための支援施策パッケージを2018年3月に打ち出す旨を表明しており、今回発出されたものはこの流れを受けたものだ(2017年12月18日記事参照)。

支援施策パッケージの主な内容は以下のとおり。

(1)普及啓発:第4次産業革命の概念やIT技術の活用方法などについてセミナー、ワークショップの開催、メディアを通じた発信を実施。

(2)企業診断およびマッチング:政府が設置した第4次産業革命向け支援ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中の企業診断プラットフォームにアクセスすることにより、企業は自社の技術・運営・組織体制・経営戦略それぞれの面などからの評価とデジタル化への支援を受けられる。また、このプラットフォームには企業同士のマッチング機能を付与し、協業を促進することとしている。今後2年間で最低3,000社を対象に診断・評価を実施予定。

(3)テストベッドプロジェクトの公募・実施:先端・革新的な生産技術の開発を行うプロジェクト(テストベッドプロジェクト)を公募し、これらに対してABDI(ブラジル産業開発庁)が研究開発資金を助成する。3,000万レアル(約9億9,000万円、1レアル=約33円)の資金規模で、20のプロジェクトの公募・実施がされる予定。

(4)設備投資に対する公的金融機関からの融資:先端的・革新的な生産設備への投資に対して、公的金融機関などから最大91億レアルまでの融資枠を設定。

◇BNDES(経済社会開発銀行):生産設備の近代化や、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、人工知能などに関連する投資を行う企業に対して、貸出金利の設定の際のスプレッドを通常の1.7%から0.9%に優遇。今後3年間で50億レアルの融資枠を設定。

◇FINEP(研究プロジェクト・ファイナンス公社):革新的な技術開発プロジェクトを行う企業に対して、ブラジル長期政策金利(TJLP)を基準としてこれのマイナス1.5%からプラス6.25%の範囲の利率で融資。今後3年間で30億レアルの融資枠を設定。

◇BASA(アマゾニア銀行):アマゾニア州マナウス地域などに所在する企業が行う設備の近代化投資、人材教育などに対して、年利4.5~6.5%で融資。11億レアルの融資枠を設定し、最長12年間(インフラ投資に対しては最長20年間)の返済期間を設定。

(5)人材育成:ブラジル商工サービス省、教育省が欧州委員会の支援を受け、技術教育に携わる1,500人の教員に対するトレーニングを実施。また、国内で100のラボを開設するとともに学生1万人を対象として高度技術教育を実施。2018~2019年で1億レアルの投資を予定。

(6)通商関連:ブラジルで製造されていない産業用ロボットに関して、現行14%となっている輸入関税をゼロとする。また、3Dプリンターなどに対する輸入関税を減率する。

(7)規格の見直し:協調型ロボットなどロボット導入を加速化するため、現行の機械安全に関する規格NR-12などをアップデート。また、アマゾナス州マナウス地域における製造企業の設備近代化投資やデジタル化を促進するため、基礎製造工程基準(PPB)などの見直しを実施。

(岩瀬恵一)

(ブラジル)

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