個人所得税の累進課税制度、1カ月で撤廃

(モンゴル)

北京発

2018年04月03日

個人所得税の累進課税制度が2月1日に撤廃され、税率は1月の制度導入以前の10%に戻された。背景としては、鉱業の好調を受けた景気回復や税収の増加、制度に対する反対世論が巻き起こったことが指摘されている。

景気回復と反対世論が撤廃の要因に

2017年4月14日の法改正により、ガソリン税や自動車特別税などの税率引き上げとともに、2018年1月から個人所得税に累進課税制度が導入された。しかし、国会は2月2日、IMFによる拡大信用供与(EFF)措置に関する第3回政策評価の期間中に同制度の撤廃を決定した。同制度は年間の収入に応じた4段階で、各段階の基準収入額以上の所得に対し10~25%の税率と、段階に応じて0~600万トゥグルク(0~約26万4,000円、1トゥグルク=約0.044円)の税額が賦課されるものだった。撤廃により、2月1日からの個人所得税率は、2017年12月31日までの10%に戻された。なお、政府発表によると、この決定は2018年1月1日までさかのぼって適用されるため、1月分として納付済みの個人所得税は2月の納税時に調整された。

累進課税制度は、政府がEFF措置を実施するに当たって財政再建の一環として導入したものだが、「これまでの政府の浪費を国民に負担させる」などと反対世論が巻き起こったことが撤廃に至った要因として指摘されている。

一方で、2017年のモンゴル経済が回復基調にあることも撤廃を後押ししたとみられる。特に税収の増加により財政再建が進みつつあること、IMFもEFF措置に基づく各種経済再建プログラムの進捗に肯定的な評価を示していたことも要因として指摘されている。

IMFは慎重な財政運営が維持できるか注目

IMFモンゴルミッションのジョーフ・ゴットレブ代表は2月6日、EFF措置の3回目の評価に関するプレス発表において、「モンゴル経済は資源輸出と国内需要の回復により予想より好調に推移している」との認識を示した。さらに、政府の財政についても「税収の増加と支出の抑制により、2017年のGDPに対する財政赤字の比率が目標の10.6%を大きく下回る1.9%となった」などと評価した。

一方でIMFは、原油価格の高騰や資源価格の下落が経済の下押しリスクとの認識を示しており、政府に対して、慎重な財政運営を行うよう喚起を続けている。

首相が税制改革の方針を発表

当地メディアMontsameの3月5日報道によると、フレルスフ首相は同日、投資促進と企業の活性化を目的とした税制改革を行うと発表し、年間営業収益が15億トゥグルク以下の中小企業に対して、支払税額の90%を払い戻すことなどを税制改革の基本方針とした。在モンゴル米国商工会議所の3月20日のプレスリリースによると、フレルバータル大蔵相は同商工会議所との月例会議の席で、税制改革法案の主眼は「税制の一本化と信用の高い民間部門の納税者に対するサポートだ」と述べ、「最終的な法案は7月に国会に提出する計画」との見通しを示した。

モンゴル政府とIMFは、EFF措置とそれに基づく経済再建プログラムの成果を肯定的に評価した。今後は税制改革の議論が進む中で、政府が緊縮財政など慎重な財政運営を維持できるか注目される。

(バザルスレン・ボロルエルデネ)

(モンゴル)

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