メルコスール、カナダとのFTA交渉開始を正式に発表

(南米南部共同市場(メルコスール))

サンパウロ発

2018年03月29日

南米南部共同市場(メルコスール)とカナダによる自由貿易協定(FTA)交渉の開始が3月9日正式に発表された。メルコスール側からの輸出品目は鉱物資源や食料品が中心で、カナダ側からの輸入品は医薬品と肥料を含めた化学品、航空機産業に関する工業製品などが上位に並ぶ。ブラジル商工サービス相は、今後メルコスールとして対外的な通商交渉を積極的に進める姿勢を強調している。なお、初回のFTA交渉は3月20~23日にカナダ・オタワで開催された。

カナダとの貿易はメルコスール側の出超

メルコスール4カ国政府とカナダ政府は3月9日、メルコスール議長国パラグアイの首都アスンシオンでFTAの交渉開始を正式に発表した。ブラジル商工サービス省によると、2010年にカナダ側から交渉に関心が示されものの、2012年以降検討が中断していた。2016年5月にブラジルのテーメル暫定政権が発足してから、交渉開始に向けた対話が本格化し、2017年1月にカナダ政府高官がブラジルを訪れた際には、財、サービス、投資、政府調達、原産地規則、貿易の技術的障害(TBT)、衛生と植物防疫のための措置(SPS)、知的財産権、環境、労働法、競争ルール、国営企業などの関心項目について意見交換をした。2017年4月と11月には、双方で技術的な打ち合わせを行い、交渉に向けた準備が整った。

ブラジル商工サービス省の2016年データによると、メルコスール4カ国のカナダ向け輸出額は35億9,200万ドル、輸入額は22億8,900万ドルでメルコスール側の出超になっている。中でも、ブラジルの貿易額が最大で輸出の65.9%、輸入の81.5%を占める(表1、2参照)。

表1 メルコスールの対カナダ輸出額推移
表2 メルコスールの対カナダ輸入額推移

カナダ政府の2016年統計ではブラジルからの輸入額は全体の0.7%、輸出では0.4%を占めるにすぎない。その一方、ブラジルの2016年統計では、カナダからの輸入額は全体の1.4%、輸出では1.3%となっている。添付資料の表2で、ブラジルからカナダ向け輸出品目(2016年、HS6桁ベース)を上位から順にみると、酸化アルミニウム、その他の甘しや糖、金〔その他の形状のもの(加工してないものに限る)〕と続く。逆に、カナダからの輸入品目は、塩化カリウム、医薬品(その他のもの)、歴青炭となっている。

そのほかのメルコスール加盟国の上位品目をみると、アルゼンチンは輸出で金が77.4%を占める一方、輸入では医薬品、天然ウラン、歴青炭(添付資料の表1参照)が上位にある。パラグアイは輸出でその他の甘しや糖、木材、採油用の種・果実、輸入は塩化カリウムが総額の約半分を占める(添付資料の表3参照)。ウルグアイは牛肉が輸出の約9割を占め、輸入は原油が5割を占めている(添付資料の表4参照)。

ブラジル側は工業製品をはじめ輸出品目の多様化を期待

ブラジル商工サービス省によると、カナダは農業品目には平均で22.5%の関税を課している一方、工業製品の税率は6%としている。自動車を除く工業製品分野では、関税の即時撤廃を見込んでいる。ブラジル政府は財だけでなくサービスや政府調達分野でもカナダ市場に注目しており、特に政府調達分野では先進国の中でも3番目の規模(2,460億ドル、2013年時点、ブラジル工業連盟調べ)だという。

マルコス・ジョルジ商工サービス相は3月9日、同省のプレスリリースで、「カナダは要求水準の高い重要市場だ」「現在の輸出品目は一部に集中しているが、品目を多様化し輸出額を大きく伸ばしたい」と述べている。また、米国政府が鉄鋼製品とアルミニウム製品に対する追加関税を発表していることに触れ、「幾つかの国際的アクターが市場を閉ざす一方、ブラジルおよびメルコスール加盟国はグローバル・バリューチェーンに市場を統合させる基本的な姿勢を示しており、カナダをはじめ新たな協定交渉は重要な道」とした。

一方、カナダ国際貿易省では、メルコスールとのFTAによるメリットに関して、ブリティッシュコロンビア州の材木、オンタリオ州の自動車部品、化学製品、ケベック州の航空宇宙産業、大西洋岸州のサーモンなどの輸出拡大を挙げている。

(二宮康史)

(南米南部共同市場(メルコスール))

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