米国消費者に商品の特性や安全性を訴求-アメリカヤクルトに聞く-

(米国)

ニューヨーク、ロサンゼルス発

2018年03月30日

アメリカヤクルト(本社:カリフォルニア州ファウンテンバレー市)は、1999年に乳酸菌飲料「ヤクルト」の米国市場での販売を開始して以来、米国での販路を拡大してきた。2014年にはカリフォルニア州南部のオレンジ郡に工場を設立し、現地生産を開始している。同社は、「ヤクルト」に馴染みのない消費者にも商品の特性や安全性を理解してもらうための取り組みを進めている。米国市場での事業展開や販売戦略について、同社に聞いた(2月26日)。

米州での進出状況

(問)ヤクルトの海外進出の状況は。

(答)現在世界38の国と地域で乳酸菌飲料「ヤクルト」の生産・販売を行っており、1日あたりの平均販売本数は世界全体で約3,500万本以上となっている。

米州大陸では、米国よりも前にブラジルとメキシコに進出している。ブラジル拠点はヤクルトにとって2番目の海外進出先(初の海外進出は1964年に台湾)として、1968年に営業を開始した。日系移民が多く「ヤクルト」の商品特性がブラジルに伝わり、ヤクルトに進出して欲しいという要望を受けたのが、ブラジルに進出を決めた背景である。その後、1981年にメキシコでの営業を開始した。従って、中南米における「ヤクルト」は、米国とは比較にならないほど広く浸透したブランドになっている。

米国でも、ヒスパニック系の消費者の認知度は特に高い。1999年にアジア系スーパーで販売を開始し、2005年にはヒスパニック系市場に販路を広げた。その後、2007年よりカリフォルニア州で米系スーパーを含む全ての店頭市場を対象に「ヤクルト」の本格販売を開始した。

市場の近くに生産拠点

(問)米国で本格生産を開始した経緯は。

(答)発売当初は、メキシコから製品を輸入して販売をしていたが、米国市場での事業の継続・拡大を踏まえ、新鮮な商品をお客様へ安定供給するため、2014年にカリフォルニア州南部のオレンジ郡ファウンテンバレー市に工場を設立し、現地生産を開始した。カリフォルニア工場の生産能力は現在一日あたり約40万本で、この工場から米国内とごく一部のカナダ市場に出荷している。

(問)販売状況は。

(答)現在の主な販売先は、地域展開をしているアジア系やヒスパニック系スーパーマーケット、また米系スーパーマーケットでは、全米に店舗を構えるウォルマートやクローガーなど大手スーパーマーケットでも販売を行なっている。

地域的には、カリフォルニア州から販売を開始し、現在テキサス州とコロラド州にも営業拠点を設置し、西部から中西部、南部まで販売しており、地域毎に、商品の特性を消費者に説明した上で、段階的に市場拡大を行なっている。なお、米国ではスーパーマーケットを中心とした店頭でのみ販売しており、ヤクルトレディによる販売システムは導入していない。

(問)配送はどのように行っているか。

(答)各地の物流会社と契約して配送している。特に、温度管理が徹底できる物流会社を選択している。広い国土の中で、消費者により新鮮な商品を安心して飲んでいただくことが重要となる。

写真 アメリカヤクルト入り口(ジェトロ撮影)

認知度向上を目指す

(問)今後の課題は。

(答)米国市場での当社商品の認知度をさらに高めていく必要がある。当社商品の消費者になって頂くために、その特性を知ってもらい、実際に飲んでもらうサンプリング活動を実施し推進している。

ブランドの告知活動として、マスメディアを通じた広告宣伝と、消費者と直接触れ合うPR活動の2つを軸にしている。

テレビコマーシャルは、ABCやNBCなど大手放送網は勿論のこと、スペイン語によるヒスパニックの消費者向けにも放映している。ヤクルトでは各海外拠点がそれぞれの市場に合ったコマーシャルを制作しており、現在米国では「プロバイオティクス」(十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物:FAO/WHO)や「ノンファット(無脂肪)」、またヤクルトは「乳酸菌シロタ株」が入った商品であることを伝えるコマーシャルを放映している。

そのほか、メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムと2009年からスポンサー契約を結んでいる。当初は球場内での来場者に対するサンプリング活動から始めたが、現在では看板広告や球場での販売も行っている。球団としてファミリーイベントを積極的に実施していることが、エンゼルスとのスポンサー契約の決め手の1つとなった。

PR活動としては、「ヤクルト」の製造工程を見て頂き、清潔な環境で作られていることを理解してもらい、商品に対する信頼と安全性が確認できる「工場見学ツアー」を、当社工場を含め世界のどの工場でも実施している。

当社の工場見学には、小中学生、ガールスカウト、老人ホームの方々、及び工場の近隣に住む方々など様々な人々が訪れている。今後は、工場から遠方の学校や施設に対して、社員が直接訪問して、腸の活動や乳酸菌の働きなどの健康情報を提供する出前授業を実施していきたい。

(鈴木敦、北條隆)

(米国)

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