一帯一路沿線国家ではシンガポールへの投資が最大に(中国2)-2016年の中国企業の対外直接投資動向-

(中国)

北京発

2018年03月30日

2016年の中国の対外直接投資(フロー、ネット)を業種別にみると、リース・ビジネスサービス、情報・コンピュータサービス・ソフトウエア、製造業、不動産などの伸びが目立った。一方、鉱業や金融はマイナスの寄与となり押し下げ要因となった。一帯一路沿線国家への投資をフローでみると、シンガポール、イスラエル、マレーシア、インドネシアが上位となった。連載の後編。

鉱業、金融が押し下げ要因に

2016年の対外直接投資を業種別にみると、構成比で最大の33.5%を占めるリース・ビジネスサービスが前年比81.4%増となったほか、製造業が45.3%増(構成比は14.8%)、卸・小売りが8.7%増(10.7%)、情報・コンピュータサービス・ソフトウエアが2.7倍(9.5%)、不動産が95.8%増(7.8%)などと伸びが目立った(添付資料の表1参照)。

2016年の前年比伸び率(34.7%増)への寄与度をみると、リース・ビジネスサービスが20.3ポイントで最も大きかった。これに次いで、情報・コンピュータサービス・ソフトウエアが8.1ポイント、製造業が6.2ポイント、不動産が5.1ポイントであった。一方、寄与度がマイナスになったものは、鉱業(マイナス6.4ポイント)、金融(マイナス6.4ポイント)、交通運輸・倉庫・郵便(マイナス0.7ポイント)、水利・環境・公共施設管理(マイナス0.4ポイント)であった。

一帯一路沿線国家ではシンガポールへの投資が最大

2016年末における中国の一帯一路沿線国家に対する直接投資(ストックベース)は1,294億ドルで全体の9.5%を占めた。国・地域別にみるとストックベースでの投資額が多い順にシンガポール(3億3,446万ドル)、ロシア(1億2,980万ドル)、インドネシア(9,546万ドル)、ラオス(5,500万ドル)、カザフスタン(5,432万ドル)、ベトナム(4,984万ドル)、アラブ首長国連邦(4,888万ドル)、パキスタン(4,759万ドル)、ミャンマー(4,620万ドル)、タイ(4,533万ドル)となった(添付資料の表2参照)。

一方、2016年のフローでみると、投資額が多い順に、シンガポール(3,172万ドル)、イスラエル(1,841万ドル)、マレーシア(1,830万ドル)、インドネシア(1,461万ドル)、ロシア(1,293万ドル)、ベトナム(1,279万ドル)、タイ(1,122万ドル)、パキスタン(633万ドル)、カンボジア(626万ドル)、カザフスタン(488万ドル)となった。

なお、中国企業の一帯一路沿線国家に対するM&A件数は115件で、金額は66億4,000万ドルでM&A金額全体の4.9%となった。

地方企業の投資が大幅に増加

非金融類対外投資を地域別にみると、「中央合計」は前年比10.4%増で307億ドルとなった。中央合計は、中央政府が直接所管する大型国有企業(中央国有企業)の投資を指すとされる。具体的には、国務院国有資産監督管理委員会(国資委)や中国銀行業監督管理委員会、中国保険監督管理委員会など国務院のその他部署に直属する国有企業の投資だ。中央合計の構成比は2006年の86.4%をピークに低下傾向が続き、2016年はこれまでで最も低い16.9%となった(添付資料の図参照)。

その一方で、地方企業の投資を指す「地方合計」は60.8%増の1,505億ドルと大幅に増加した。構成比では前年より6ポイント拡大し、83.1%となった。なお、地方で最も投資が多かったのは上海市で前年比3.4%増の240億ドルだった。2位は広東省で87.2%増の230億ドル、3位は天津市で7.1倍の179億ドル、4位は北京市で26.8%増の156億ドルだった(添付資料の表3参照)。

騰訊控股(テンセント)がストックベースで7位に

個別企業の対外投資については、ストックベースのみランキングが発表されている。それによると上位は中央国有企業が多くなっている(添付資料の表4参照)。

国資委の8月21日の発表によると、中央国有企業のうち国資委直属は98社とされている。対外直接投資額(非金融分野、2016年末ストックベース)トップ20社をみると、15社が中央国有企業で占められている。このほか、中央国有企業以外では、ソーシャルネットワーキングサービスやオンラインゲームを手掛ける騰訊控股(テンセント)が7位、北京市政府直属の国有企業である北京控股集団(前年12位)が14位、航空・旅行・物流などを幅広く手掛ける海航集団(前年27位)が15位、広東省深セン市に本社を置く通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ、前年15位)が16位、中国中信集団(前年30位)が19位となった。騰訊控股(テンセント)は前年のランキングでは100位以内に入っていなかったが、2016年に海外企業の買収に積極的に取り組んだことなどで投資額が増えたものとみられる。

(藤原智生)

(中国)

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