実行額は8割増、製造業が伸びを牽引(遼寧省)-2017年の対中直接投資動向(5)-

(中国)

大連発

2018年03月29日

2017年の遼寧省の対内直接投資額(実行ベース)は前年比77.9%増の53億4,000万ドルとなり、2016年通年のマイナス成長から大幅な増加に転じた。製造業が全体の伸びを牽引した。

遼寧省は製造業が伸びを牽引、瀋陽市も前年比で伸長

2017年の遼寧省の対内直接投資額(実行ベース)は前年比77.9%増の53億4,000万ドルとなった(添付資料の表1参照)。うち大連市への投資額が8.2%増の32億5,000万ドル、瀋陽市への投資額が24.1%増の10億1,000万ドルと、瀋陽市は前年のマイナスから増加に転じた。遼寧省の契約ベースの投資額は未発表だが、契約件数は20.8%増の512件であった。

産業別の対内直接投資額(実行ベース)は、第一次産業が未発表で、第二次産業が前年比199.8%増の30億9,000万ドルと大きく伸長したほか、第三次産業も13.1%増の22億2,000万ドルと増加した(添付資料の表2参照)。遼寧省政府によると、第二次産業の投資額は、実行額全体の57.9%を占め、そのうち、通信設備、コンピュータおよびその他の電子設備製造業への投資額が14億5,000万ドルと、実行額全体の27.1%を占めた。

国・地域別でみると、契約件数は未発表であるが、投資額(実行ベース)の上位5位はいずれも前年比で増加した(添付資料の表3参照)。香港が1位の22億5,000万ドルで、日本は香港に次いで2位となった。

大連市は半導体、自動車など製造業への投資が目立つ

大連市への投資内訳は、国・地域別には発表されていないが、業種別では、先進製造業と現代サービス業がそれぞれ実行額の43.0%と56.9%を占めた。

製造業の大型案件としては、米インテルが2017年3月、不揮発性メモリ工場の第2期拡張工事を開始した。追加投資額は27億3,000万ドルで、2019年3月に稼働開始する見込みである。

自動車関連では、パナソニック(オートモーティブ&インダストリアルシステムズ)が2017年4月に車載用リチウムイオン電池の新工場を開所し、2018年3月13日には車載用リチウム電池の生産を開始した。

自動車部品関連では、米ボルグワーナーが大連工場第2期(投資総額2億ドル)の建設を開始、竣工(しゅんこう)後はデュアルクラッチトランスミッションの中核となる部品を生産する。そのほか韓国のハノンは8,000万ドルを投じ、新エネルギー車用エアコンコンプレッサーを生産する。

機械製造関連では、富士電機の合弁企業である大連富士冰山自動販売機の第二工場(投資総額7,500万ドル)が2017年7月に生産を開始した。また、スター精密は2017年11月、工作機械事業の製造子会社である斯大精密(大連)に、旺盛な工作機械需要に対応するためCNC 自動旋盤等工作機械を生産する新工場を建設すると発表した。投資額は約7億円で、2019年1月に稼働を開始する見込みである。

医療機器関連では、オムロンが大連にある生産、販売、研究開発を担う子会社3社を統合し、同社の中国本部を設立する。統合完了後は、新会社の資本金を1億5,000万元増資する計画だ。

そのほか、既存の事業領域拡大に向けた新規投資の動きも見られた。アイリスオーヤマは2017年12月、建築内装資材市場に参入することを発表した。20億円を投じ、2018年1月より建築現場向けに建築内装資材を製造・販売する。

非製造業では、香港の瑞華が投資総額14億元をかけ、商業施設と宿泊施設、オフィスが一体化した大連豊茂国際大厦の建設を開始したほか、香港のハチソン・ワンポア(和記黄埔)が9億2,500万香港ドルを投じ、不動産開発プロジェクトを開始する運びとなった。

金融関連では、東京センチュリーが2017年3月、氷山集団傘下の投資会社との合弁で大連氷山集団華慧達融資租賃(資本金1億7,000万元、東京センチュリーが40%を出資)を設立したと発表した。新会社は、大連氷山集団の主力製品(冷凍・冷蔵機械など)の販売促進に向けたベンダー・ファイナンスを主な事業とする。

物流分野では、香港の招商局集団が2017年6月、遼寧省政府と「港湾協力枠組み協定」を締結した。大連港集団と営口港集団を母体に遼寧港口集団を設立し、2018年末までに、遼寧省政府と招商局集団が遼寧省港湾を包括的に運営するプラットフォームを構築する。

瀋陽市は自動車、物流関連への投資が目立つ

瀋陽市への投資では、主に自動車と物流関連の案件が目立った。

製造業では、自動車関連で、フランスのルノーが2017年7月、華晨中国汽車(ブリリアンスチャイナ)の子会社である瀋陽華晨金杯汽車の株式49%を取得することで双方が合意したと発表し、12月にはブリリアンスチャイナと瀋陽市大東区にて新たな合弁会社として華晨金杯雷諾(ルノー)汽車を設立すると発表した。ルノーなど3つのブランドの小型商用車を生産する予定で、2022年までに年間販売台数15万台を目指す。

非製造業では、物流関連の米国プロロジスグループがプロロジス国際物流パークプロジェクトを瀋陽市于洪区に建設することが正式に発表された。建築総面積は18万平方メートルで、投資総額は9億元。倉庫保存、EC決済等の機能を一体とする国際物流パークへと発展させる計画で、2018年3月に着工し、2021年末に竣工する見込みだ。

遼寧省政府、自由貿易試験区の推進等による外資誘致を強化

2017年は、遼寧省の域内総生産(GRP)成長率が前年比4.2%増とプラスに転じたほか、貿易総額と対内直接投資額(実行ベース)もそれぞれ17.9%増と77.9%増と2桁の伸びを示し、2014年から2016年まで続いた経済減速基調を脱した。遼寧省の唐一軍代理省長(現在は省長)は2018年1月27日の政府活動報告において、「遼寧省の経済に『底打ち安定、安定の中で好転』の良い傾向が見られる」と述べた。

遼寧省政府は、2018年の遼寧省の重点政策として対外開放の推進を挙げ、中国(遼寧)自由貿易試験区、大連越境EC総合試験区など対外開放レベルを高める上で核となる政策をさらに推し進めるともに、外資の積極的な誘致に向け、金融、通信、医療、教育等の分野における開放を推進するとした。同時に、証照分離や行政手続きの効率化を通して、ビジネス環境を改善し、国内外企業の誘致を強化するとしている。2017年4月10日に稼働開始した中国(遼寧)自由貿易試験区は、同年12月末時点で新規設立登記企業数が約2万1,600社に達し、うち外資企業による新規設立登記数は延べ274社に達した。

(匂坂拓孝、李穎)

(中国)

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