中国からの投資は3年ぶりに増加-2016年の中国企業の対外直接投資動向-

(台湾、中国)

中国北アジア課

2018年03月30日

台湾の統計によると、2016年の中国の対台湾直接投資額(認可ベース)は、前年比1.5%増の2億4,763万ドルとなった。伸び率がプラスになったのは2013年以来3年ぶりとなる。

台湾経済部投資審議委員会(以下、投資審議委員会)によると、2016年の中国企業の対台湾直接投資(認可ベース、注1)の件数は158件で前年(170件)比7.1%減となった(添付資料の図参照)。一方、金額は前年比1.5%増の2億4,763万ドルと3年ぶりにプラスに転じたものの、微増にとどまっている。

台湾が中国企業による対台湾直接投資を解禁してから、2009~2012年までは件数、投資額ともに概ね増加傾向にあった。その後2012年から2014年までは件数が130件台、投資額は3億ドル台で推移していたが、2015年には2億ドル台に減少し、2016年もほぼ横ばいに留まっている。台湾の対内直接投資総額に占める中国の構成比は、2014年の5.5%から、2015年は4.8%、2016年は2.2%まで低下している。この2016年の大幅な低下は、MICRON TECHNOLOGY B.V.やASML HOLDING N.V.による大型投資案件などの影響を受けて外国企業(中国を除く)の対内直接投資が大幅に増加した一方で、中国企業による対台湾投資額が微増と大きな変化がなかったことによるものと考えられる。

近年、中国企業は海外のM&Aを積極的に展開しており、「外資転陸資(出資者が外資から中国資本に変わる)」案件が増加しているが、すべての案件について、必ずしも出資者の属性が明確になっているとは限らない。中国企業による台湾への投資は実質的に減少しているとは言えないと政府関係者は語る(中時電子報、2017年1月21日)。

上位に電気・電子関係への投資が並ぶ

2016年の最大の投資案件は、瀋陽凱迪絶縁技術が台北順捷科技へ32億3,400万台湾元の増資を行った案件だった(添付資料の表1参照)。2位は環鴻電子による環鴻科技への増資案件(10億台湾元)、3位は環鴻電子による環隆電気への増資案件(8億9,107万2,490台湾元)と、環鴻電子による案件が2件続いた。第5位の渤詢(上海)投資中心は、投資審議委員会の審査過程で出資者が変わった「外資転陸資」案件である。関係者は、中国企業の海外展開が活発になるにつれ、将来こうした案件が増えるだろうと述べた(中時電子報2017年1月21日)。

最大の投資分野は卸・小売業

投資審議委員会が2009年7月から2016年12月末までに許可した累計947件を業種別にみると、卸・小売業が615件で、投資額4億8,862万ドルと最大だった(添付資料の表2参照)。2位の銀行業は3件で、投資額2億144万ドルとなったが、中国の銀行による台湾支店への増資があった2014年以降新規案件はない。3位の電子部品製造業は50件で、投資額1億6,681万ドルとなった。

なお、2016年単年でみると、卸・小売業は件数が106件、投資額が4,642万ドル、電子部品製造業は件数が5件、投資額が1,530万ドルとなった(注2)。

「外資転陸資」案件が増加

中国から台湾への投資が低調といわれるなか、近年、中国企業がグローバルなM&Aを展開している影響で、「外資転陸資」案件が増加している。投資審議委員会は2017年に入り、NEXPERIA B.V. (投資審議委員会会議新聞稿1月掲載、注3)とSYNGENTA ALPHA B.V. (同3月掲載、注4)による2つの投資案件について、出資者が外資から中国資本に変わった案件(「外資転陸資」案件)として公表している。

投資審議委員会の張銘斌執行秘書は、このような「外資転陸資」案件は2016年でおよそ10数件あるだろうと表明した。ただし、2016年末以来、中国企業のM&A熱は低下しつつあり、新しい案件が即座に増えることはないだろう。加えて、グローバルなM&Aが行われた際は一定の時間差が生じ、効果はすぐには表れないと指摘した(経済日報2017年3月21日)。

(注1)中国からの投資案件には、中国からの直接投資のみならず、香港や英領バージン諸島などのタックスヘイブンを経由した間接投資も含む。

(注2)2016年単年は2015年までの累計を差し引きして試算した。2015年までの累計はそれぞれ以下の通り。卸・小売業(509件、44,220万ドル、構成比30.6%)、電子部品製造業(45件、15,151万ドル、構成比10.5%)。

(注3)NEXPERIA B.V.はディスクリート、ロジック、MOSFETデバイスを専門とする企業。もともと半導体大手NXP Semiconductors N.V.の標準品部門で、北京建広資産管理(JACキャピタル)などによって買収された(2016年6月買収合意、2017年2月にNXP Semiconductors N.V.が売却完了を発表)。2017年1月の新聞稿掲載時は売却未完了であった。

(注4)SYNGENTA ALPHA B.V.は農薬世界最大手シンジェンタ(スイス)の関連会社で、シンジェンタ(スイス)は中国化工に買収された(2016年2月に中国化工は買収を発表、2017年6月にシンジェンタ(スイス)が買収完了を発表)。2017年3月の新聞稿掲載時は買収未完了であった。

(嶋亜弥子)

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