投資協定に署名、経済関係の発展に期待
(アルメニア、日本)
欧州ロシアCIS課
2018年03月19日
日本・アルメニア投資協定が2月14日、署名された。アルメニアはIT分野で豊富な人材を有し、外資系企業への優遇措置や法整備などに積極的だ。この投資協定により、アルメニアにおける日本企業の自由で安定した活動が確保され、投資の拡大と経済関係の一層の発展が期待される。
投資家の権利・保護の法的枠組みを規定
アルメニアの首都エレバンで2月14日、田口栄治駐アルメニア大使とエドワルド・ナルバンジャン外相とが、「日・アルメニア投資協定(投資の自由化、促進および保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定)」に署名した。旧ソ連諸国ではロシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ウクライナに次いで5カ国目。
協定は、2国間の投資を促進し、投資家の権利を保護する法的な枠組みを定めたもので、具体的には以下の規定が含まれている。
- 投資参入段階および参入後の内国民待遇および最恵国待遇(自国の投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国の投資家とその投資財産に付与すること、第三国の投資家とその投資財産に劣後しない待遇を相手国投資家とその投資財産に付与すること)
- 公正・衡平待遇〔投資財産の保護に対して慎重な注意を払う義務、適正な手続きを行う義務、裁判拒否の禁止、恣意(しい)的措置の禁止、投資家の合理的期待を裏切らない義務など〕
- 特定措置の履行要求の禁止(投資受け入れ国が投資活動の条件として、現地調達要求、輸出要求、技術移転要求などをしてはならない)
- 収用の際の補償の条件、送金の自由、紛争の解決手続などの投資保護規定
日・アルメニアの投資協定は2017年6月、滝沢求外務大臣政務官(当時)のアルメニア訪問の際に、ナルバンジャン外相との間で交渉開始に合意していた。
経済協力の新たな推進力に
投資協定の署名式で、ナルバンジャン外相は「2017年は両国の外交関係樹立25周年だった。近年、両国が相互に大使館を開館したこと(注)が、両国関係を緊密にしている要因であることに疑いはない。本日署名した投資協定も、両国の経済協力に新しい推進力を与えてくれるだろう」と述べた(アルメニア・ラジオ・ウェブ版2月15日)。
本投資協定の調印に関しアルメニア経済開発投資省のホワンネス・アジジャン副大臣はジェトロのインタビュー(3月7日)に対し、「投資協定の締結は大変喜ばしい。アルメニアはロシアを含むユーラシア経済連合の一員であり、域内自由貿易が実現している。また、EUとの間ではGSPプラス(一般特恵関税制度の優遇制度)が適用されている。南に隣接するイランとの間でも自由経済区などの設立を通じて経済交流の促進を図り、将来的な自由貿易協定(FTA)の締結を視野に入れており、アルメニアはこれら地域への輸出基地としてのポテンシャルがある。今回の署名を書面の上だけで終わらせるつもりはない。署名はスタートであり、その内容を実質的なものとしていくよう、投資環境のさらなる改善と投資誘致に両国の関係機関とともに努めていく」とコメントした。
ITを中心に積極的な外資誘致を図る
アルメニアでは、IT、精密機器、鉱業、貴金属、農業(ワイン、ブランデー)などの分野にロシアや欧米企業が積極的に投資を行っており、政府も経済自由特区の設置や法整備などを通じて外資誘致を進めてきた。
特にITの分野では豊富な人材を有し、アルメニア国外に居住するディアスポラ(移住民)を通じて世界中にネットワークを築いている。日本でもIT関係のセミナーを開催するなど、経済交流、投資誘致活動に積極的に取り組んでいる。今回の投資協定の締結により、現地での日本企業の自由で安定した企業活動と、それを通じた両国経済関係の一層の発展が期待されている。
この協定は今後両国の議会で批准手続きが行われ、その完了を相互に通告した30日後に発効する。
(注)アルメニアは2010年7月に東京に、日本は2015年1月にエレバンに、それぞれ大使館を開設している。
(今津恵保)
(アルメニア、日本)
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