「焼酎輸出促進協議会in LA」が発足

(米国)

ロサンゼルス発

2018年03月19日

米国での焼酎ビジネス拡大を目指し、「焼酎輸出促進協議会 in LA」が2017年8月に発足した。米国市場で焼酎が直面する課題とともに、同協議会の活動を紹介する。

伸び悩む焼酎輸出

近年、日本産アルコール飲料の対米輸出は、日本食ブームもあり順調に伸びている。2016年の日本酒輸出は2012年比20億円増の52億円、ウイスキーは27億円増の29億円に達している。特にウイスキーの伸びは目覚ましく、現地バイヤーから入手困難との声を聞くほか、サンフランシスコの酒販店ではサントリーの「シングルモルトウイスキー 山崎25年」(希望小売価格12万5,000円)が5,000ドルで販売される事例も出ている。

一方、焼酎の2016年の対米輸出は、2012年比7,000万円増の3億5,000万円にとどまっている。

その原因としては3つの課題が挙げられる。1つは、米国における圧倒的な知名度不足だ。日本酒を知っている米国人であっても、焼酎はまず知らない。2つ目は、オールジャパンとしての戦略がなく、そのような活動がなされていないことだ。3つ目として、これらの結果ではあるものの、米国において焼酎ビジネスへの参加者が少ないことがある。

売り上げ伸ばすスピリッツ

米国への焼酎輸出はこのように厳しい状況にあるが、見方を変えればポテンシャルを秘めているとも考えられそうだ。

まず第1に、米国のアルコール飲料市場はスピリッツ(蒸留酒)が牽引しているという点だ。米国では、アルコール飲料はビール、ワイン、スピリッツの3つに分類されるが、業界団体の米国蒸留酒協議会(Distilled Spirits Council of the U.S.:DSCUS)のデータで、2000年から2016年までの売り上げシェアの推移をみると、ビールは8.5%減、ワインは1.4%の微増なのに対し、スピリッツは7.2%伸びている。ウイスキーやウオッカ、テキーラといったスピリッツが売り上げを伸ばしている米国市場において、同じスピリッツである焼酎にも大いに可能性があると考えられる。

第2に、米国のアルコール飲料市場ではプレミアム化がキーワードという点だ。2003年から2016年までのスピリッツのクラス別売上額の伸びをみると、クラスが上がるにつれ伸びが高くなるという傾向が鮮明に出ている。DSCUSのデータでは、クラスを下からバリュー、プレミアム、ハイエンドプレミアム、スーパープレミアムの4つに分類しているが、バリューが12%増、プレミアムが46%増、ハイエンドプレミアムが2.1倍、スーパープレミアムが4倍となっている。伝統をベースに高品質な職人の技術に支えられている焼酎にとって、プレミアム化は大きなメリットといえそうだ。

オールジャパンで焼酎輸出を促進

こうしたことを背景に、米国における日本食文化の中心地で、アジアからの輸入のゲートウエーともいうべきロサンゼルスで、2017年8月、「焼酎輸出促進協議会in LA」が設立された。官民連携でのオールジャパンによる焼酎輸出のプラットフォームともいえる。同協議会は、日本政府機関や日系食品商社、有識者や県人会関係者11人で構成され、ジェトロ・ロサンゼルス事務所が事務局を務めている。年3回程度会合を開催し、当面は3つのテーマ(焼酎の知名度向上、焼酎輸出の課題共有および問題解決策の検討、関係者間の連携促進によるオールジャパンとしての取り組み強化)を議論することで、米国における焼酎ブームを創出していくことにしている。

第1回会合は8月3日にロサンゼルス市内のホテルで開催され、焼酎出荷量日本一の宮崎県から河野俊嗣知事および蓬原正三県議会議長もオブザーバーとして参加した。在ロサンゼルス日本総領事公邸で設立記念レセプションが開催され、地元のレストランやバーの関係者、輸入業者や流通業者、ハリウッドの映画関係者ら約150人を招待した。宮崎県から9蔵、奄美大島の2蔵、地元日系食品商社3社が提供した焼酎が振る舞われ、米国における焼酎の可能性について意見交換があった。

協議会で活発な意見

第1回協議会と11月の第2回協議会では、各委員から以下のような活発な意見が出された。

  • 最大の課題は知名度向上であり、そのためにはまずは飲んでもらうことが大事。
  • 焼酎の強みを明確に、ストーリーやナラティブ(物語、語り)を積極的に発信すべき。
  • 消費者に知ってもらうには、パッケージデザインの工夫や選ぶ際のガイドなど分かりやすさが大事。
  • 効果的で効率的なPRマーケテイングのためには、SNSやセレブの活用を図るべき。また、他のスピリッツと同じとはいかないまでも、ある程度の宣伝費も必要。
  • メーカーと消費者の間にいるバーテンダーや販売員らへの教育的視点も重要。
  • 単独での取り組みには限界があり、オールジャパンによる取り組みを進めるべき。
  • 何より焼酎メーカー(蔵元)のやる気や意欲こそが重要。

以上の意見を踏まえ、3月23日には第3回協議会の開催を予定している。「焼酎輸出促進協議会in LA」では、各委員から出された意見をある程度集約した段階で、日本国内の焼酎関係者(自治体、組合など関係団体、蔵元など)にフィードバックする予定だ。

(西本敬一)

(米国)

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