米側は交渉の進展に不満、鉄鋼とアルミニウム関税も交渉材料に-NAFTA再交渉の第7回会合が終了-

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2018年03月08日

北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の第7回会合が3月5日に終了した。ロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、交渉の進展に不満を示すとともに、メキシコの大統領選挙や米国の中間選挙などの政治的スケジュールにより、交渉期限が間近に迫りつつあるとの認識を示した。トランプ米大統領は、メキシコとカナダに対して、通商拡大法232条に基づき検討している鉄鋼とアルミニウムに対する関税賦課からの適用除外の可能性も示唆し、両国に譲歩を迫っている。

米代表は交渉期限が迫りつつあるとの認識

メキシコ市で2月25日から開かれていたNAFTA再交渉の第7回会合は、3月5日に閉会した。ライトハイザーUSTR代表は、今回の交渉会合にて、「良い規制慣行(Good Regulatory Practices)」「衛生植物検疫措置(SPS)」「(法令の)公表および執行(Publication and Administration)」の3分野で合意が成立したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。一方、再交渉分野全体の30章のうち、現在合意が成立しているのは6章にすぎないとして、交渉の進展に不満を示した。

ライトハイザーUSTR代表は特に、(1)(国外への)アウトソースを助長しない協定内容への変更、(2)米国の製造業や労働者を公平に扱う原産地規則の策定、(3)政府調達規則の改定、の3つを特に重要な分野として例示した。

ライトハイザーUSTR代表はまた、7月1日のメキシコ大統領選、カナダのオンタリオ州(6月)とケベック州(10月)の選挙、11月の米国の中間選挙や大統領貿易促進権限(TPA、注)に基づいて定められた国内法上の手続きについて触れ、交渉期限が間近に迫りつつあるとの認識を示した。その上で、3カ国間協定の維持が望ましいが、それが難しければ2国間協定の交渉を進める準備がある、と述べている。なお、メキシコのイルデフォンソ・グアハルド経済相は「北米市場が統合されている現状を踏まえれば、NAFTAは3カ国間の協定でなければならない」と述べ、2国間での交渉を拒否している(ロイター3月6日)。

鉄鋼・アルミニウム関税の適用除外を交渉に絡める

トランプ大統領は3月5日、通商拡大法232条に基づき検討している鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する関税賦課について、「新しく公平なNAFTA協定が署名されない限り」メキシコとカナダに対してもこれら関税を賦課すると発言している。

ソニー・パーデュー農務長官は、米国の農産品輸出に対する対抗措置への懸念を示しつつも、メキシコとカナダやEUから貿易上の譲歩を得るために、鉄鋼とアルミニウムに対する関税賦課を交渉材料にすることに賛意を示している(通商専門誌「インサイドUSトレード」3月7日)。

他方、ライトハイザーUSTR代表は、通商拡大法232条は安全保障の問題に関する対応で、NAFTAとの関連性はないと強調した。ただし、関税は発表後すぐに適用されることは通常なく、メキシコとカナダは関税適用までの間にNAFTAに関する方針で合意する時間があると述べている(「インサイドUSトレード」3月5日)。なお、通商拡大法232条では、導入する措置の内容の決定後、15日以内に当該措置を実施することが求められている。

(注)米国憲法では外国との通商関係は議会が管轄しているが、TPA法は、この通商交渉に関する権限を大統領に一時的に付与するもの。議会に対する報告・相談義務など、同法に定められた目的や手続きにのっとって政権がまとめた通商協定法案は、議会で修正を受けずに賛否のみの採決に付すことができる。現行のTPA法は、6月末に延長期限を迎える。

(鈴木敦)

(米国、カナダ、メキシコ)

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