投資手続き改定、事業許可発行要件の厳格化に懸念

(インドネシア)

ジャカルタ発

2018年03月30日

インドネシア投資調整庁(BKPM)は、2018年1月1日から外資企業に対する新たな投資手続き規定を導入した。新規程では、投資計画の実現を求めるため、営業開始に必要な事業許可の発行要件を厳格化する規定も設けられた。実際の運用によって影響度合いが変わるため、引き続き注視が必要な状況だ。

外国企業は大規模事業者であることを明記

今回の規定改定は、投資計画の確実な実現を求めている。会社設立から事業開始までの手続きでは、事業許可(Izin Usaha, 略称 IU)発行要件を厳格化する内容が盛り込まれた。2月28日に実施した日系企業向け説明会の結果などを踏まえ、改定後のIUの発行手続きなどについて、これまでに分かっている運用方針は以下のとおり。

(1)規程第13号第12条:投資額および資本構成

従来、BKPMが内規のみにとどめていた「外国企業(PMA)は大規模事業者であること」を明記した。大規模事業の定義は、法律2008年第20号(中小零細企業法)に基づき、土地・建物を除く純資産100億ルピア(約7,700万円、1ルピア=0.0077円)超、または最新の財務諸表に基づく年間の売上高500億ルピア超であることと規定した。他方、PMAの投資要件は従来どおり、土地建物を除く総投資額100億ルピア超、および払込資本金25億ルピア以上とした。

(2)規程第13号第10、11、34条:IUの発行要件

インドネシアに設立した会社は、生産・営業開始などにあたり、従来どおりIUを申請する必要がある(第11条)。今回の改定では、申請時点で大規模事業としての基準(規程第13号第12条による)に達していない場合、1年間の期限付きでIUを発行する(第34条)。IUの有効期限内に大規模事業としての基準に達しない場合は、期限終了の30日前までにBKPMに申請することで最長1年間の延長が可能と定めた。ただし、再延長はできないことから、上記2年間で大規模事業の要件を満たさない場合、IUは取消しとなり、事業を継続することはできなくなる。要件を満たせば、事業を継続する限り有効なIUが発行される。

(3)規程第13号第20、22、23条:投資登録手続き

新規程では、従来、会社設立から生産・営業開始までの準備段階で取得が必要とされていた原則許可(Izin Prinsip、略称IP)を撤廃し、代わりに「投資登録」を行うことを規定した(第20条)。BKPMの発行する投資登録書は、内容によって1年から最長5年となる(第22条)。これにより、企業は原則的に、投資登録書の発行を受け、その有効期限内に、事業開始に必要な許認可の取得や工場などの建設工事、機械設備の導入などを行う。なお、投資登録は原則的にBKPMの専用ポータル「SPIPISE」を通じてオンラインで行う(第23条)。

他方、工場建設などを必要としない事業分野、または生産に必要な機械・資本財などの輸入にかかる免税措置などの便宜を利用しない場合、投資登録が不要である旨も規定した(第11条)。この場合、生産・営業を開始するまでの準備段階でBKPMへの許可取得は不要となる。日系企業向け説明会においてBKPMは、いずれの業種が当てはまるか全容を明らかにしなかったが、さしあたり貿易会社やコンサルティングサービス会社を対象としていると説明した。さらに、今後、投資登録が不要な業種については、オンライン許認可システム「SPIPISE」上で投資登録を行わない設定とするため、仮に投資家が投資登録を希望しても、投資登録書は発行されない。

(4)規程第13号第96~110条:工業団地などに所在する企業の手続き迅速化

工業団地、自由貿易地域、経済特区、国家観光戦略地区に所在する企業の事業許認可については、BKPM所定の様式を利用して、工場建設や事業開始に必要なライセンスを取得する旨を宣誓することにより、建設工事と環境管理・建設許可・工業許可などのライセンスを同時に行うことができるようになった。必要な許認可を取得してから着工という従来の流れと比較して、手続きの迅速化につながる。ただし、この便宜を利用する場合、BKPMに申請が受理されてから90日以内に建設を開始する必要がある点に留意すべきだ。BKPMが説明会で明らかにしたところによると、建設予定の工場の図面などを作成していれば、実際に着工していなくとも「建設開始」とみなす。BKPMは本便宜の積極的な利用を促す方針だが、利用するかどうかはあくまで事業者の任意だ。また、同一企業が第2工場を建設する場合など、拡張投資でも本便宜は利用可能だ。

IU発行については運用面の注視を

上記(1)~(4)に関して、今後、特に留意が必要となるのは(2)のIU発行要件だ。日系企業向けの説明会では、BKPMが、外国企業には投資の確実な実現と許認可を取得した範囲での事業活動を求めた。新規進出企業は、規程上、投資登録と事業許可の有効期間内で大規模企業としての要件を満たす必要があり、運用面でどれくらい厳しく適用されるか注視する必要がある。さらに、既進出企業にとっても、同一工場において従来と異なる事業分野の製品を生産する場合、新たな場所に工場を設立したり、レストランなどの店舗を開いたりする場合、追加・拡張した事業について新たな事業許可が必要となる可能性がある。その場合に、BKPMからどの程度の投資が要求されるか未だ不明確なため、よく情報収集をする必要がある。新規定に基づく会社の設立から操業までの手続きの流れは図のとおり。

参考資料:

BKPM規程2017年第13号(日本語仮訳PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)原文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

BKPM規程2017年第14号(英文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます原文PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

(山城 武伸)

(インドネシア)

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