デポジット・リターン・スキームの意見公募を実施予定-リサイクル率向上に向けた取組み-

(英国)

ロンドン発

2018年03月30日

英国政府は3月28日、飲料用容器の購入時にデポジットを支払い、空の容器を返却することで返金を受けられるデポジット・リターン・スキーム(DRS)の意見公募を2018年10月からに実施すると発表した。同制度の導入により飲料用のペットボトル・缶・ビンのリサイクル率向上を目指す。産業界は、環境への配慮として歓迎したものの、負担の対象などについて懸念を示した。

西欧諸国に比べて低いリサイクル率

英国政府は、プラスチックのリサイクル率向上と土壌・海洋汚染の削減のためのデポジット・リターン・スキーム(DRS)の導入について、2018年10月2日から意見公募を実施すると発表した。今回意見公募が予定されるDRSは、イングランドを対象とし、ペットボトル・缶・ビンの使い捨ての飲料用容器に対して課金するもの。容器の返却によりデポジットが返金されるが、現在のところ、デポジットの金額などの詳細は発表されていない。

英国では、飲料用や家庭で消費されるシャンプー用などのプラスチック製のボトルが年間130億本消費され、そのうち30億本以上は焼却処分や埋め立て、路上や海へ投棄されている。2016年は、75億本のプラスチック製のボトルがリサイクルされリサイクル率は58%であった。一方、北欧や西欧では英国と同じ基準でのデータは取れず、対象はペットボトルに限定されるが、リサイクル率が90%以上の国が目立つ(表参照)。

マイケル・ゴーブ環境・食糧・農村地域相は、「プラスチック(による汚染)がイルカを殺し、カメを窒息させ、我々の尊い生態系を侵食し海洋環境への甚大な影響を及ぼしていることは疑いようがない。我々が今、この脅威に立ち向かい、毎日数百万本のリサイクルされていないプラスチック容器(の拡散)に歯止めをかけることは、間違いなく必要不可欠だ」とし、続けて「我々は、すでに有害なマイクロビーズを禁止し、プラスチックのレジ袋を削減した。今から我々は、海洋の浄化を支援するためプラスチック容器に対し行動をとりたい」と述べた。

英国内で統一した制度設計が重要

DRSはすでにデンマークやスウェーデン、ドイツなどで導入されている。消費者は、1容器あたりスウェーデンでは8ペンス(約12円、1ペンス=0.01ポンド=約1.5円)、ドイツでは22ペンスのデポジットを払い購入し、利用後は自動販売機のような機械に空の容器を投入することでデポジットの返金を受けられる。英国政府の「自発的および経済的インセンティブ分科会」が2018年2月に公表した報告書によると、DRSの導入により飲料用容器のリサイクル率が約20%向上した国もあり、より高品質なリサイクル素材を集めることに貢献するとしている。

また、英国政府は2015年10月に、プラスチックのレジ袋を有料化したところ、大手7スーパーで83%のレジ袋削減につながったことから、DRSの導入でも同様の効果を期待している。

スコットランドでは2017年9月、ニコラ・スタージョン・スコットランド政府首相が、DRSの意見公募実施について言及し、2010年にスコットランド政府の出資により設立されたゼロ・ウェイスト・スコットランドが導入を主導することとなっている。ウェールズではDRS導入の発表はされていないが、BBC(2018年3月28日付)によると、ウェールズ政府のスポークスマンはDRS導入について、環境・食糧・農村地域省とすでに英国全土でどのようにこのスキームが機能し得るか検討しているとのことだ。上述の英国政府の報告書では、スコットランドがDRSの導入検討の開始を、他地域に先駆けて公表したことに対し、スコットランドとそれ以外の地域で制度に差が生じ、製造者が地域によって異なる容器を製造しなければならないリスクがあるとした。

産業界は環境への配慮を歓迎するも、負担を懸念

プラスチック産業の業界団体である英国プラスチック連盟は、DRSの導入について、飲料用容器のリサイクル率を促進させるものであり、すべての素材の飲料用容器が今回の意見公募の対象となっている点を歓迎した。一方で、路上などに投棄されるごみのうち、プラスチックボトルは2%、路上などに投棄される飲料用容器(そのほかの素材を含む)の20%を占めているにすぎないとし、アルミ製の缶やガラス製のボトルがDRSに含まれることが重要と強調した。

850以上のビールの醸造所からなる業界団体の独立醸造所協会(SIBA)は、「小規模な醸造所は環境への影響に対して意識は高い。リサイクルを促し、廃棄物や公害を減らすことを歓迎する」とした。その一方で、SIBAのメンバーの多くは小規模醸造所であり、国際的な大規模醸造業者と比べて追加コストによる負担が大きいことから、どのようなデポジット・スキームであっても対象を適切に決定し、負担は最小限に抑える必要があるとした。

(鵜澤聡)

(英国)

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