環境面の許認可もシングルウインドーで可能に-タミル・ナドゥ州でビジネス環境改善に向けた新州法施行(2)-

(インド)

チェンナイ発

2018年03月01日

ビジネス環境改善に向けた新タミル・ナドゥ(TN)州法では、投資許認可をワンストップで受け付けるシングルウインドーの内容が大幅に見直された。拠点の設立などに際し、各種許認可取得の煩雑さが軽減され、事業立ち上げに要する期間の短縮が期待できる。連載の後編は、新州法の施行によるサービスの拡充内容や産業界の声を紹介する。

建設許可申請の審査期間が短縮

インドで工場などを建設する際に必要な行政手続きの1つとして、「1974年水(汚染防止および管理)法」「1981年大気(汚染防止および管理)法」に基づく、州汚染管理局(PCB:Pollution Control Board)からの建設許可(CTE:Consent to Establishment)の取得がある。タミル・ナドゥ州ではこれまで、シングルウインドー手続きを利用する場合であっても、州汚染管理局からの建設許可取得については実務上、別途申請を行わなければならなかった。しかし、今回の新州法の施行により、シングルウインドー手続きにおいて、同許可の申請が可能になった。

加えて、同許可については、2018年タミル・ナドゥ州ビジネス促進規則(Tamil Nadu Business Facilitation Rules, 2018)に受理から承認までの期限が明記されたため、3カ月程度かかるとされていた審査期間が、環境負荷が最も高いカテゴリー(レッド・ミディアム、レッド・ラージ)で45日、それ以外のカテゴリー(グリーンからレッド・スモールまで)で30日以内となる。

さらに同規則では、申請が複数の当局にまたがる場合であっても、「関係する所管当局は全て、それぞれの規則や規制に沿って、申請を受理すると同時に処理しなければならない」と前置きした上で、「所管当局は申請の処理に先立ち、他の当局からの許認可取得を待ってはならない」と明記しており、各種許認可申請手続きの迅速化を後押しすると予想される。

産業界は新州法に好意的な評価

報道によると、新州法に対して産業界からは好意的な評価が寄せられている。インド二輪車大手TVSモーターのベヌ・スリニバサン会長は「歓迎すべき取り組みだ。州同士での誘致競争が熾烈(しれつ)になる中、こうした取り組みは特に重要」とした。マドラス商工会議所のラム・ベンカタラマニ会長も「新州法は、既に当地に立地している企業にとっても、新たに進出する企業にとっても利益がある。タミル・ナドゥ州のビジネスのしやすさランキングも上昇するだろう」としている。

タミル・ナドゥ州は2017年、インド商工省産業政策促進局(DIPP)が世界銀行の協力の下で実施した「州別ビジネス環境改革評価2016」(29州と7の連邦直轄領が対象)で18位と、前年調査から順位を6つ落としていた。中でも、「情報へのアクセスと透明性」「シングルウインドー」項目の評価が低く、新州法の施行により評価の改善が期待される。

許認可取得の煩雑さ軽減の一方で不十分な点も

新州法はビジネス環境改革で先行する他州と比較すると、まだ改善の余地はある。例えば、許認可手続きに関しては、「州別ビジネス環境改革評価2016」で1位となったアンドラ・プラデシュ州は、「アンドラ・プラデシュ州シングルデスク政策2015-2020(Andhra Pradesh Single Desk Policy 2015-2020)」において、設立前と操業前の手続きに関し、対象となる全てのシングルウインドー手続きを、原則として申請受理後3~21日以内に処理することを明記している。

新州法が冒頭でうたう「国内で最も好まれる投資先の1つ」となるためには、各種許認可取得手続きのさらなる迅速化が求められそうだ。

(坂根良平)

(インド)

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