VAT未還付問題で新たな枠組みを実施

(モロッコ)

ラバト発

2018年03月19日

政府や中央銀行、全国銀行協会(GPBM)、モロッコ経団連(CGEM)らによって、民間企業への付加価値税(VAT)未還付問題に関する合意が成立し、1月23日、VAT還付の新たな枠組みが発表された。この枠組みは2月5日から実施されている。

未還付金が経営を圧迫する事態にも

モロッコではここ数年、輸出加工などに携わる国内および海外企業向けのVAT還付が滞っており、未還付金は全体でおよそ110億ディルハム(約1,320億円、1ディルハム=約12円)に達するとみられている。企業によっては未還付金の累積により経営が圧迫される事態となっており、モロッコ経団連(CGEM)をはじめ国内経済界から問題の解決が求められていた。

今回の枠組みにより、企業はVAT未還付金を国内の取引銀行を通じて回収できるようになる。ただし、この方法で早期回収を請求すると、金利はつかない。一方、金利を含む還付を望む企業は、従来のVAT還付手続きを選択することもできる。具体的には、企業が政府に対してVAT未還付金を請求すると、企業の取引銀行が本来の還付スケジュールに応じて最長で5年間、年平均利率3.5%で還付する仕組み。

モハメッド・ブーサイド経済・財政相は、新たな還付の枠組みが国と企業双方の利益となると評価する。一方、CGEMのミリエム・ベンサラ=シャクルン会長は、この枠組みの履行に向けて政府にあらためて責任を求めるとともに、当局がVAT未還付金の総額を把握すること、未還付問題をこれ以上悪化させないこと、VAT還付を行う銀行が不利益を受けないことを要請した。

なお、VAT未還付問題は進出日系企業にも少なからず影響していることから、ジェトロでも在モロッコ日系企業連絡会の枠組みで、企業やモロッコ当局へのヒアリングを行い状況の把握を進めている。

(水野大輔)

(モロッコ)

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