抹茶に続く日本茶市場の拡大に期待-ニューヨークとシカゴでセミナーを開催-

(米国)

ニューヨーク、シカゴ発

2018年03月05日

ジェトロと農林中央金庫がニューヨークで、ジェトロがシカゴで、それぞれ茶ビジネス関係者に日本茶の魅力を伝えることを目的とした「日本茶セミナー」を2017年11月に開催した。両会場合わせて約100人の参加者を前に煎茶をはじめ日本茶の魅力を伝えた。

緑茶の輸入先1位は日本

米国の茶(紅茶、ハーブティーなどを含む)の消費は年々増加傾向にある。2017年の米国茶協会(Tea Association of the USA)の調査によると、米国の茶の売上高は2015~2017年の3年間で8.7%増となり、125億ドルに達した。今後も年平均成長率は3~5%になると見込まれており、この高い成長は、種類の豊富さ、手軽さ、健康効果、持続可能性、継続的な革新、独特で味の良い高品質茶の発掘によるものだと考えられている。

米国の2017年の緑茶の輸入額は前年比3.8%増の1億4,404万ドルだった。相手国・地域別にみると、1位は日本で5,122万ドル(前年比18.0%増)、2位は中国で4,453万ドル(14.0%減)、3位はカナダで993万ドル(61.3%増)だった。日本と中国で輸入額の66.5%を占めている(注)。

日本茶需要の掘り起こしに狙い

米国では、健康に配慮した生活スタイルが定番化していることを背景に抹茶の人気が続いているが、茶葉の日本茶の人気は抹茶に比べてまだ限られている。

こうした状況を打開して、日本茶のさらなる輸出拡大につなげようと、2017年11月15日にジェトロと農林中央金庫がニューヨークで、翌16日にはジェトロがシカゴで、それぞれ茶ビジネス関係者に日本茶の魅力を伝えることを目的とした「日本茶セミナー」を、開催した。都内の日本茶輸出促進協議会に勤める傍ら、日本茶の「伝道師」として活躍するスウェーデン人のオスカル・ブレケル氏が講師を務め、日本茶の成分、品種、茶を入れる際の温度や浸出時間、茶器の選び方など、さまざまな側面から講演した。

ニューヨークでのセミナーには、約60人の茶ビジネス関係者が参加したほか、日本産の茶を取り扱う企業4社(伊藤園、高岡屋、山本山、Sara’s Tea Caddie)も出展ブースを構え、来場者と商談や意見交換を行った。

写真 ニューヨークでのセミナー会場の様子(ジェトロ撮影)

来場者からは「お茶は単純な商品ではなく、背景にストーリー(歴史や作り手のエピソードなど)があるため、米国市場に合う」という声が上がった。また「お茶でどのような飲み物(カクテルなど)を作れるのか、またはお茶と食べ物(魚、チーズ、肉など)のペアリングなどのアイデアをもっと知りたい」という声も聞かれた。

写真 出展ブースで日本茶を楽しむ来場者(ジェトロ撮影)

翌16日にシカゴで行われたセミナーには、約40人の茶ビジネス関係者が出席した。日本産の茶を取り扱う4社(伊藤園、The Tea house、TeaGschwendner、Rishi Tea)もブースで商談や意見交換を行った。さらに、商談会の後には現地消費者を対象としたセミナーも実施され、約90人が参加した。

レストラン、ホテル、カフェなどの関係者から、日本茶の知識を得られ大変勉強になった、魅力を確認できたなどの声が寄せられ、「日本茶を勧めやすくなった」との声もあった。米国ではレストランなどで「お勧め」を聞くことが多く、日本茶が勧められる機会が増えれば消費の促進につながるのではないかと期待される。日本茶について詳しく学ぶ機会は乏しいことから、シカゴの消費者にとっても貴重な経験となったようだ。

ブレケル氏は「それぞれの茶葉に合った湯の量と温度、浸出時間があるので、それらの特徴を理解することが重要」と語る。同氏のお勧めは、苦みと渋みをある程度吸収して味をまろやかにするという常滑焼など日本産の急須だ。セミナーの途中では、常滑焼の平型急須で入れた煎茶や、専用ボトルで水出しした煎茶が振る舞われ、試飲した来場者らからは感嘆の声が上がった。

米国人は生産ストーリーに関心

米国での日本茶の普及に関して、ブレケル氏は「日本茶は特別なものだというイメージを持ってもらうことが重要だ。例えば、美しい山々に囲まれた土地で栽培されたシングルオリジン(単一品種)の日本茶には、多くの米国人が興味を示す。実際にはそのような日本茶は希少だが、その良いイメージを日本茶全体のイメージにすることで需要拡大につながると思う」と語った。

米国には日本以外の茶も多く輸入されており、需要拡大のためには差別化が極めて重要と考えられる。価格だけではない「価値」を知ってもらうことによりプレゼンスの向上につなげることが輸出拡大の1つのポイントではないだろうか。米国人は個々の日本茶に秘められた生産ストーリーにも関心があり、それらを意識して情報発信することも必要になってくるとみられる

ブース展示を行った多くの企業から「茶に特化したBtoBイベントだったため試飲者にきちんと説明できて大変役に立った」とのコメントがあった。また、「今回のようなイベントを毎年開催することが、効果を上げるために重要」といったコメントも寄せられた。

(注)出典:米国商務省センサス局。対象HTSコード:0902.10、0902.20。

(沼田茂仁、デラコスタ葉子、笠原健)

(米国)

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