カナダの小麦、大麦生産者団体はCPTPP早期批准に期待-自動車部品業界団体と労組は批判-

(カナダ)

トロント発

2018年03月26日

3月8日にチリで「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP、いわゆる「TPP11」)」の署名式が行われたことを受け、主だったカナダの経済団体や業界団体は相次いで声明を発表した。カナダ商工会議所や農業団体は支持を表明したが、自動車部品業界団体や労組は、署名後に公表された自動車に関する日本とのサイドレターは役に立たないとして批判した。

経済団体と農業団体が支持を表明

カナダ商工会議所(CCC)は、CPTPPの署名を歓迎すると発表した。CCCのペリン・ビーティ会頭は「カナダのビジネス界にとって輸出市場を多角化し続けることは、極めて重要だ。CPTPPは多くの分野で貿易障壁を低減させ、世界で最も重要な幾つかの市場へのアクセスを向上させる」との声明を発表した。アルバータ州における小麦、大麦の生産者を代表するアルバータ州小麦委員会(AWC)とアルバータ州大麦委員会(AB)は連名でCPTPP署名を歓迎する意向を表明した。両委員会は、CPTPP発効時にカナダが批准国に含まれるよう、連邦議会に対し、迅速に承認することを要請した。AWCのケビン・ベンダー議長は「カナダの農家は輸出に依存している。この協定は、農業分野で収益性を向上させる新たな市場機会をもたらすだけではなく、CPTPP域内において、カナダが主要強豪国から市場シェアを奪われることはないだろう」との見解を示した。

自動車部品業界団体と労組はサイドレターを非難

一方、カナダの自動車部品製造業協会(APMA)と、労働組合(ユニフォー)は、公表された自動車に関する日本とのサイドレターは役に立たないとして批判した。CPTPP署名式に参加したシャンパーニュ国際貿易相は「自動車に関する日本とのサイドレターは、日本市場へのアクセスを改善する勝利だ」と絶賛した。このサイドレターにより、カナダの安全基準が日本で認められることで、安全基準に関する非関税障壁を取り除き、カナダの自動車産業の立場を改善すると述べたが、APMAのフラビオ・ボルペ会長は「サイドレターは、カナダの自動車業界が日本市場を開放するために求めてきた問題について対処していない」と批判した。また、ユニフォーのジェリー・ディアス委員長も「サイドレターは意味がなく、強制執行力もない」と非難している。

他方、カナダ日本自動車工業会(JAMAカナダ)のデビッド・ワーツ専務理事は、日本市場への参入を含めた幾つかの課題は克服されるとの見方を示した。また、カナダ2位の自動車部品メーカー、リナマーのリンダ・ハセンフラッツ社長は「CPTPPはさまざまな分野のカナダ企業に成長とグローバル化のための多くの機会をもたらす」として支持している(「フィナンシャル・ポスト」紙3月8日)。

1月にCPTPPの交渉妥結が発表された後、ジェトロはグローバル連携省にインタビューを行った。同省のCPTPP交渉担当官は「多くのカナダ企業は、貿易協定の活用方法をまだ完全には理解していない。協定がもたらす優位性を、カナダ企業の貿易取引にどのように活用するか学んでもらう必要がある」との見解を述べた。

(伊藤敏一、ジョニー・タン)

(カナダ)

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