電子インボイスの改定、一部対応が延期に-中南米の制度改定動向-

(メキシコ)

メキシコ発

2018年03月22日

国税庁(SAT)税務細則(2017年1月1日施行)により、電子インボイス(電子税務証明書:CFDI)システムのバージョンアップが図られた。しかし、多くの事業者では期限までに新バージョンが要求する項目に対応することが難しいことなどから、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)ビジネス環境整備委員会の枠組みにおいて、同庁に対し入力項目の簡素化や適用延期などを求めたところ、一部について対応の延期が認められた。

事業者の対応が追い付かず

電子インボイス(CFDI)は、国税庁(SAT)のサイトとリンクした会計情報システムにより、インターネット経由で発行が義務付けられている請求書兼領収書のこと。事業収入の受領時や源泉徴収の発生時、従業員への給与支払いなどにも使用される。これがないと、税務上の損金算入や付加価値税の申告などさまざまな税務に支障を来す。

このうち、給与明細用のCFDIは2017年1月1日から新版(バージョン1.2)が適用となり、3月31日までの移行措置を経て4月1日から本格適用となっているほか、貿易取引では確定輸出用CFDI(バージョン1.1)の発行が2018年1月1日から義務化されている。

そして最も大きな改定となったのが、財やサービスの国内取引の際に発行されるCFDIの新版(バージョン3.3)の適用だ。当初は2016年12月23日付官報公布(2017年度税務細則決議)により、2017年7月1日から適用とされていたが、2017年7月18日付官報公布(2017年度税務細則第2次修正)により、適用開始を同年11月30日まで延期した(注1)。

その背景としては、新バージョンへの事業者の対応が追い付かないことが指摘される。インボイス情報の正確性の担保として、製品・サービスのカテゴリーの特定、取引内容や支払い方法・回数など17の入力項目が追加された。例えば製品・サービスカテゴリーについては、国連で採用されている5万3,000カテゴリーの中から選択することになり、日系企業が取り扱うことの多い自動車部品では部品、補修品、付属品、サービスなど細かく分かれている。多くの事業者では、こうした項目の確認作業に時間を要し、期限までに新バージョンで求められる項目に対応することが困難となった。しかも、カテゴリーの選択ミスは罰則が科されることになっていた。

入力簡素化と適用延期を要請

そこでメキシコ日本商工会議所税務通関委員会は2017年11月6日、日墨EPAビジネス環境整備委員会の枠組みにおいてSAT本庁を訪問し、フェルナンド・マルティネス中央管理官と面談。入力項目の簡素化と適用のさらなる延期を求め、SAT長官宛て嘆願書を提出した。

マルティネス管理官は、5万3,000のカテゴリーは8桁の番号で管理されているが、自社の扱っている製品・サービスの該当番号が分からないとの指摘が多く出されていることを認めた上で、「試行期間」として上位カテゴリーに当たる6桁レベルの選択でよいとの移行措置を取り、その場合は3,200カテゴリーに減るとした。また、制度開始後6カ月間はカテゴリーの入力ミスについて罰則は科さないとし、CFDIの運用に関してSATの日系企業担当者を窓口に充てることを約束した。

さらに2017年11月22日、SATは納税者向けの情報告示として、CFDIに関する以下の措置を発表した。

  • 2017年12月31日までCFDIの旧バージョン3.2と新バージョン3.3の利用を自由選択とする。2018年1月1日以降はバージョン3.3のみを有効とする。
  • CFDIを発行し、入金があった時に発行する領収書(Comprobantes con el Complemento para Recepcion de Pagos)の発行義務化については2018年4月1日まで延期する。
  • CFDIキャンセル承認プロセスの義務化を2018年7月1日まで延期する(注2)。
  • 製品・サービスなどカテゴリーの選択ミスについて、2018年6月30日までは原則として罰則を科さない。

なお、これらの措置については、同年12月15日付官報で公布された2017年度税務細則第6次修正にて正式に適用されている。

(注1)官報公布日は7月18日付となっているが、事前告知版として5月25日付でSATウェブサイトで公開している。

(注2)いったん発行したCFDIを72時間経過して何らかの理由でキャンセルする場合には、発行者が受領者にSATの納税者メールボックス(BUZON TRIBUTARIO)を通じてキャンセルの旨を連絡し、承認を得る必要がある。

(中島伸浩)

(メキシコ)

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