Z世代の若者は上から目線やフォーマルなスタイルを好まず-セミナーで専門家が解説-

(ハンガリー)

ブダペスト発

2018年03月09日

ジェトロは1月31日、ブダペスト市内のホテルで「ジェネレーションZ(Z世代)を知る」と題したセミナーを開催した。「Z世代」と呼ばれる主に10代の若者の特徴を把握し、近い将来の消費者として、またハンガリー進出日系企業が労働力として取り込むためどう向き合えばよいのか、専門家を講師に招いて解説した。

デジタル世代には情報の発信者が重要

ジェトロが実施した「2017年度欧州進出日系企業実態調査」では、在ハンガリー日系企業の最大の経営上の問題点は人材確保だった。好調な経済を背景とした労働力不足が顕在化しているが、従来、当地の日系企業は即戦力にならない新卒者の採用にはあまり積極的ではなかった。しかし、2017年第4四半期の失業率が3.8%と4%を下回る中で、大学生や職業学校の学生を研修生として受け入れるデュアルトレーニングシステムの導入に踏み切るところも出始めている。

ハンガリーでは、1995~2009年生まれ(現在10~20歳前後)を「Z世代」と呼び、インターネット世代でもあるZ世代を労働力としてどのように受け入れていくか、産学双方で研究や意見交換がされている。今回ジェトロは、Z世代に詳しい専門家を地元の大学と人材コンサルティング会社から招き、Z世代の特徴や社員として受け入れた際に仕事で生かすための留意点を学んだ。

日頃から大学生と接点を持ちZ世代の研究者としてメディアでも情報発信しているペーチ大学社会・メディア科学研究所のグルド・アーダーム博士によると、Z世代は、年上世代(ジェネレーションXやY)が知人や周囲の人から情報を得ていたのと異なり、テレビやラジオ、新聞ではなく、スマートフォン上にあるメディアを情報ソースとして重視する傾向がある。紙媒体メディアの購入はおカネの無駄と考えている、とする。また、Z世代は生まれた時からデジタル機器に囲まれ、1日中ディスプレーに目を向ける世代で、常に刺激を受けるマルチタスク(複数のことを同時に行う)な生活環境にあることから、集中の持続時間が短く、外部との関係も表面的で深入りしない傾向がみられるという。

Z世代は、すぐに理解できることや形式にとらわれないことが重要で、フォーマルなスタイルは好まない傾向にある。また、スピード重視なので、芸術や文学など時間や継続的な投資が必要な分野には関心が薄く、2時間の映画はダイジェスト版で済ませるという。なお、音楽・芸術分野では、映画やポップ、ロック、ストリート芸術、写真が人気で、演劇やミュージカル、ジャズにはある程度の支持があり、不人気はオペラやオペレッタ、絵画(鑑賞)だ。

Z世代にとっては、情報の発信者が誰かということが重要で、長期間にわたり多くの情報を発信し続けている人を認める傾向がある。上下関係を嫌い、グループなどへの参加志向が強いとする。ウェブ上のオピニオンリーダーは、(1)ユーチューブ、(2)フェイスブック、(3)インスタグラムの順で活用しており、同世代の人材探しの際は当該メディアの活用が有効だという。

Z世代の消費文化をリードするのは都市部に生活する女性

最後に、ハンガリーのZ世代を生活スピード別に3カテゴリー分類、さらに各カテゴリーを細分化した。企業は各グループの特徴に応じてビジネス戦略を取ることが望ましいという(かっこ内はZ世代の中の各グループの構成比)。

◇まず生活スピードが速く、消費文化をリードするグループとして最大

(1)カラフル・コンシャス(Colorful-conscious)(16.1%):都市部に住む女性が中心で、高い学歴。自分に自信があり友人も多く、自分の意見をメディアに流す。

(2)センシティブ・フューチャープランナー(Sensitive future-planners)(7.5%):こちらもほぼ女性で、円滑な人間関係を好む。目立つのを避ける傾向があり、何かを始める行動力はないが、好き嫌いははっきりしている。

(3)ミー/セレブリティー(Me/cerebrities)(9.4%):主に男性。成功や見た目、ブランド重視。ITや技術に関心が高い。

◇生活スピードが中程度のグループ

(4)アベレージ(Average)(23.9%):夢の実現のための投資はしない。金銭面も含め何ごとも平均的。

(5)センシティブ・モティベーテッド(Sensitive-motivated)(14.3%):地方の資産家でない家庭出身。金銭的には恵まれた環境にないが、ステータス向上のために教育やスキルを重視。上昇志向が強い。

(6)サクセス・オリエンテッド(Success-oriented)(7.5%):男性が多く、最も物欲が強い。努力はせず夢見がち。現実との葛藤から嫉妬やフラストレーションをためやすい。

◇変化の遅いグループ

(7)リスナー・ルッカー(Listeners-lookers)(15.1):ほぼ男性。補助的な仕事に従事している場合が多い。将来の目標はなく、情報収集に貪欲でなくメディア利用も少ない。友人も少ない。

(8)ステイ・アウター(Stay-outers)(6.2%):ほぼ100%が男性。情報に関心なく、友人の少ない引きこもりタイプ。スマートフォンなどデジタル機器を使いこなせない、古いタイプともいえる。

Z世代が認める事例を示して信頼関係を

人材コンサルティング会社エボリューショングループのパートナーでメンタルトレーナーのゲーグル・ユーリア氏は、Z世代への対応は、上から目線でなく、コーチングが必要と話す。同社が国内のZ世代1万人に対して実施した調査によると、約半数が、賃金の良さや企業の安定性を理由に外国での就業に前向きな結果が出ている。労働流動性の高い世代といえそうだ。

職場では、世代の特徴を踏まえて従業員に経営や日常の業務に関するメッセージを送るのが望ましく、Z世代には同世代からのメッセージが有効という。同世代の声に耳を傾ける傾向があるからだ。従って、社内の同世代で積極性のあるオピニオンリーダーを見つけ、その経由で企業として必要な情報の拡散を自由に行うことを検討することが有効だ。

Z世代は、上司の過去の経歴は重視しておらず、Z世代が認める使える事例を示しながら信頼関係をつくる必要がある。そのためには、職場においてコーチングを意識したコミュニケーションが重要で、常に「なぜ?」からスタートし、理解不足はないかフィードバックを欠かさず、上から目線でなく対等に接することがポイントという。

Z世代は雰囲気も含め職場の居心地に敏感なことから、業務パフォーマンスのフィードバックは月1回、対面での実施が望ましいという。年1回では従業員のニーズを把握できないからだ。

(三代憲、本田雅英)

(ハンガリー)

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