R&D投資を促す情報産業法、改正は見通せず-中南米の制度改定動向-

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年03月08日

政府は、情報産業法を改正する暫定措置法を2017年12月に議会に提出した。これは、情報産業法に規定された情報通信関連の研究開発投資に伴う減税適用が承認されていない企業に対して、投資促進のための猶予措置を定めたもので、暫定措置法としては効力を発しているが、正式な法律となるためには議決を経る必要がある。しかし、審議の成り行きは不透明となっている。

情報通信機器メーカーへの恩典効果に疑問

情報産業法(Lei de Informatica)は、情報通信機器メーカーが製品の品質向上などのため、当該製品の売上額の最低5%をブラジル国内での研究開発(R&D)投資に充てる場合、工業製品税(IPI)の最大80%を免除するもの。税の減免を受けるためには、会計書類を政府に提出し承認を受ける必要があるが、書類を準備する企業側の負担と、書類の審査を行う政府側の人手不足とが相まって、十分な恩典効果が得られていなかった。連邦会計監査院も、この措置がブラジルにおける技術の進歩に役に立っているのか疑問視するコメントを公表している。

暫定措置法の狙いは、民間企業のR&D投資を一層促進することに加え、十分な減税メリットを提供することで外資系企業の撤退を防ぐことにあるとされる。

主な内容は以下のとおり。

  • 法律の適用範囲を「情報機器およびオートメーション機器」から「情報通信技術に関連する機器」へと拡大。なお、これまでソフトウエアが同法の対象とされておらず、業界からはこれも対象とすべきとの意見があるが、暫定措置法には含まれていない。
  • 会計書類の作成に当たって、ブラジル証券取引所に登録されている民間監査人の活用を可能とする。また監査人にかかる費用は控除可能。
  • 売り上げ規模が1,000万レアル(約3億3,000万円、1レアル=約33円)以下の企業は会計書類の提出不要。
  • その他、アマゾニア州西部およびアマパ州の企業については、環境関連技術への投資活動も対象となる。

暫定措置法は既に効力を発しているが、有効期間は60日間で、議会で採決されない場合は60日間まで自動延長されることとなる。正式な法律となるためには議会の審議・議決を経る必要がある。議会では、まず上下両院議員12人ずつからなる合同委員会での審議・承認を経て、下院審議・採決、上院審議・採決となるが、まだ合同委員会による承認もなされていない。

なお、情報産業法に基づく税制優遇措置は、WTOが2017年8月に発出した紛争処理委員会(パネル)報告書で内外差別的でWTO協定違反と判断され、現在ブラジルが上訴している。

(岩瀬恵一)

(ブラジル)

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