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日EU・EPAの活用セミナーを福山で開催

(EU、日本)

欧州ロシアCIS課

2018年03月15日

ジェトロは2月6日、福山商工会議所、神戸税関、広島県商工会議所連合会による経済連携協定(EPA)の活用に関するセミナーを共催した。セミナーの講演では、ジェトロからは日EU・EPAによる新たなビジネス機会への期待について、神戸税関はEPAの原産地規則について、アールFTA研究所はEPAを活用したビジネス戦略について説明した。

EU市場進出の意義を説明

まず、ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課の田中晋課長がEU市場の魅力や日EU・EPAによるビジネス環境の変化について説明した。

田中課長は冒頭、英国のEU離脱(ブレグジット)にも触れ、2019年以降に欧州のビジネス環境が大きく変わるとした。英国については、EUとの離脱交渉次第ではあるものの、ブレグジット後の移行期間が終了するとみられる2020年末までは、英国にも日EU・EPAが適用される可能性があると説明した上で、以下のように述べた。

EU市場は、西欧では日本や米国と同様の1人当たりGDPの水準にあり、日本からの高付加価値製品の購買力があることに加え、中・東欧でも1人当たりGDPが伸びていることから、EUトータルでの購買力が高まってきている。また、EUで製品の価値が認められることで、ブランドとして世界に認められやすくなるほか、EUの食品規制や環境基準は厳しいが、これらの規制・基準をクリアすることで、EU以外の国際市場でのブランド価値が高まる。ジェトロが毎年実施する日系企業実態調査では、欧州進出日系企業の営業利益見通しについて、黒字の割合が年々増えてきている。リーマン・ショック、欧州債務危機からの回復がみられ、このタイミングでのEPA妥結は欧州でのビジネスを後押しするものとなる。

また、日EU・EPAの原産地規則については、原産品の累積と生産行為の累積の両方が利用可能な、完全累積制度を採用したことや、品目別原産地規則で定める原産地規則の付加価値基準について、個別の事業者が、控除方式の域内原産割合(RVC)と非原産材料の最大割合(MaxNOM)のうち、より有利な計算方式を選択できる仕組みを導入した。EUの関税分類については、合同関税品目分類表(CN)と呼ばれる物品の分類に基づく品目コード(CNコード、6桁のHSコードに、7~8桁目のCN下位品目分類を加えたもの)に加え、TARIC下位分類(9~10桁目)を設定している。

写真 講演を行う田中課長(ジェトロ撮影)

原産品の判断基準について解説

続いて、神戸税関業務部の宗本文明原産地調査官が、EPAの原産地規則について説明した。日EU・EPAでは、日本・EUの双方にEPA特恵税率が適用されるが、そのためには、EPAの原産地規則によって、製品が特恵税率の対象産品となるか厳格に判断する必要がある。宗本氏は、原産地規則による対象産品の判断は、原産地基準・積送基準・手続き的規定の3つを満たすことが求められるとした上で、原産地基準によって現産品と認められる条件について詳しい解説を行った。原産地基準では、製品の材料がどこまでさかのぼっても原産材料のみの完全生産品は原産品と認められる。ただ、材料の中に非原産材料が含まれる場合であっても、製品となる工程で大きな変化(実質的変更)があれば、実質的変更の起こった国を原産地とする考え方になっている。実質的変更には、関税分類の変更あるいは、十分な価値が産品に付加されるなどの条件がある。

また、宗本氏は環太平洋パートナーシップ(TPP)などの複数の締約国があるマルチなEPAでは、他の締約国の原産材料を自国の原産材料と見なすことや、他の締約国での製造を自国の製造と見なすといった完全累積の効果により「日本に居ながらにして海外展開が可能」ということも紹介した。

宗本氏はさらに、原産地基準のほかにも、積送基準と手続き的規定についても説明した。日EU・EPAで導入される原産品の自己申告制度については、コストや時間を省くことができるが、制度を理解した上で活用することが求められるとした。

EPAを活用した取引が拡大の方向

中小企業向けコンサルティング業務などを行っている、アールFTA研究所の麻野良二代表取締役は、EPAを活用したビジネス戦略について解説を行った。世界のEPA・自由貿易協定(FTA)は、早くはEUや南米諸国が牽引し、2000年代に入りアジアなども積極的に取り組み始めたことから急増している。また、EPA・FTAの形態も2国間から多国間の枠組みへと拡大する方向にあり、日本は日EU・EPAやTPPなどの多国間の巨大EPA・FTAで構成国となろうとしているとした。

麻野氏は、従来のEPA・FTAの活用について、実際に相談があった企業の事例を紹介し、中小企業にとっては、輸入先や国内取引先からEPAの活用を求められることが多く、EPA原産地規則への認識が不十分な中での原産地証明書に係る手続きなどへの対応が課題となっているとした。今後、日EU・EPAやTPPなどが発効していく中では、EPA利用が取引の前提となる可能性が強まるとした上で、締約国間でモノと生産行為の累積制度が導入され、輸出品が原産品となる可能性が高まることや、自己申告制度が重要になることを説明した。自己申告制度では、原産地証明書に要する手間とコストが削減できるメリットがある一方、輸出品の原産性立証のため、これまでの第三者証明制度と同様に国内で製造したことを裏付ける製造工程表や、材料を把握するための総部材表といった根拠資料の作成・管理について、社内や関係企業との自主的な連携がより一層求められる。こうした輸出側の義務を満たすことができれば、EPAによる特恵関税のメリットを享受することができるとした。

今回のセミナーには広島県内の企業が参加し、セミナー後には、多くの参加者が講師に質問をする姿が見られた。

(木下裕之)

(EU、日本)

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