投資阻害要因に改善の兆しと強調-ラウンドテーブルが東京で開催-

(パキスタン、日本)

カラチ発

2018年03月16日

ジェトロは2月21日、国際協力機構(JICA)、国連工業開発機関(UNIDO)、日本・パキスタン経済委員会と「パキスタン投資促進ラウンドテーブル」を東京都内で開催した。パキスタン投資庁(BOI)によると、投資の阻害要因となっているインフラ、治安、税務などは改善の兆しがみられるという。

日本からの自動車関連投資を特に期待

パキスタン投資促進ラウンドテーブルには、パキスタン進出企業や進出を検討している企業などの関係者約20人が参加した。在日パキスタン大使館のムハマド・アブバカール・シディーク商務参事官は「パキスタンでは日本企業の動向に関心が高い」と話した。2017年11月に開催されたパキスタンで最大級の展示会「エキスポ・パキスタン」のジャパンパビリオンには日本企業25社が出展しており、パキスタン政府は、日本とのビジネス拡大に向けて、冷凍マンゴーの対日輸出などに力を入れることにしている。

ラウンドテーブルで、パキスタン投資庁(BOI)投資促進・マーケティング局のサジャード・フサイン課長は、投資促進政策として経済特区(SEZ)制度と自動車開発政策(ADP)を紹介し、「日本の、特に自動車関連で強みを持つ企業からの投資に期待している」と述べた。BOIでは、世界銀行が毎年発表している「ビジネスのしやすさランキング」の順位を上げることを目標に、投資環境の改善に向けた「100日間アクションプラン」を実施している。ランキングでパキスタンは2016年が144位、2017年も147位と低迷しているが、「法人設立、建設許可、電力事情、不動産登記、信用供与、納税、輸出入など各分野に焦点を当て、改善を目指している」(田中裕子JICA投資環境整備アドバイザー)という。

複雑な税制について理解が必要

現在、パキスタンには約80社の日系企業が進出している。ジェトロの「2017年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、パキスタンは今後1~2年間の事業拡大意欲が調査対象の20カ国・地域の中で最も高い。ジェトロ・カラチ事務所によると、近年は乳児用粉ミルクなど日用消費財分野への進出が注目を集めているが、パキスタン進出に当たっては留意点も幾つかあり、特に複雑な税制については理解を深めておく必要がある。「ジェトロも活用しながら十分に情報収集を行ってほしい」と呼び掛けた。

ラウンドテーブルに参加した日本企業からは、インフラ、治安、税務などについて質問が出た。中国パキスタン経済回廊(CPEC)の開発に伴うインフラ整備については、道路のみならず、鉄道、港湾、電力などが進捗しているそうで、フサイン課長は「特に電力分野については大幅な改善がみられ、近い将来に余剰電力が発生する見込み」と話した。

治安については、日本企業から「カラチ市内で移動する際に必要となる警備員のコストが、中小企業の進出の障壁になっている」という声が上がった。フサイン課長は「政府による治安対策強化により、カラチ市内では大規模事件の発生件数が減少するなど治安状況は改善し、実際の治安状況は日本で報道されるよりも安全」としつつ、在留邦人が路上犯罪の被害者となるケースもあることから、引き続き十分な安全対策を講じるべき」と述べた。

税務については、長時間かかる税の支払い手続きを、政府は自動化を進めるなどして改善を図っているという。

(野上活)

(パキスタン、日本)

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