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国防費やインフラ支出の増加で財政赤字が拡大-トランプ政権、2019会計年度の予算教書を発表-

(米国)

ニューヨーク発

2018年03月01日

トランプ政権は2月12日、2019会計年度の予算教書を発表し、議会に提出した。社会保障関係経費などの歳出抑制策を盛り込む一方で、国防費やインフラ支出の増加により、2017、2018会計年度と比べて赤字幅が拡大し、債務残高も拡大する見通しを示した。また、財政収支の見通しについて、2018会計年度の予算教書では10年後の2027会計年度に黒字化する予測を示していたが、今回は財政赤字が残る見通しとなった。

歳出総額は4.6%増、歳入総額は2.5%増

トランプ政権は2月12日、2019会計年度(2018年10月~2019年9月、注1)の予算教書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。表題を「効率的、効果的、責任ある米国予算」とし、納税者から納められた貴重な税収を、連邦政府が価値ある政策だけに使うことを保証するための大胆なビジョンだとした。

予算教書では、2019会計年度の予算について、歳出総額は前年度比4.6%増の4兆4,067億ドル(GDP比:21.0%)、歳入総額は2.5%増の3兆4,223ドル(16.3%)との案を示した(表参照)。歳出のうち、裁量的支出については、2011年に成立した財政管理法に基づき、2021会計年度までの支出額に、国防費・非国防費別の歳出の上限(Budget Authority)が設定されている。今回の予算教書では、前回の2018会計年度の予算教書と同様に、その内訳の変更が示された。具体的には、国防費の歳出上限を650億ドル増やす一方で、非国防費の上限を同額減らすことが盛り込まれた。裁量的経費の歳出上限については、2月9日に成立した2018年超党派予算法(Bipartisan Budget Act of 2018)において、2018、2019会計年度の上限を、それぞれ1,430億ドル、1,520億ドル引き上げることが決定されたが、今回の予算教書には一部しか盛り込まれていない。行政管理予算局(OMB)のマルバニー長官は「1兆ドルに近い(連邦政府の)財政赤字を永遠に続けていく必要はない」と述べ、新しい歳出上限に届くまで歳出を拡大する必要はないとの見解を示した(ホワイトハウスプレスブリーフィング2月12日)。

表 予算教書で示された歳入・歳出、財政収支、政府債務残高(単位:10億ドル、%、△はマイナス値)
会計年度 歳出 歳入 財政収支 政府債務残高
金額 前年度比 GDP比 金額 前年度比 GDP比 金額 GDP比 金額 GDP比
2017年度 3,982 3.3 20.8 3,316 1.5 17.3 △665 △3.5 14,665 76.5
2018年度 4,214 5.8 21.0 3,340 0.7 16.7 △873 △4.4 15,790 78.8
2019年度 4,407 4.6 21.0 3,422 2.5 16.3 △984 △4.7 16,872 80.3
2020年度 4,596 4.3 20.8 3,609 5.5 16.4 △987 △4.5 17,947 81.3
2021年度 4,754 3.4 20.5 3,838 6.3 16.5 △916 △3.9 18,950 81.7
2022年度 4,941 3.9 20.3 4,089 6.5 16.8 △852 △3.5 19,946 81.9
2023年度 5,160 4.4 20.2 4,386 7.3 17.1 △774 △3.0 20,809 81.3
2024年度 5,348 3.6 19.9 4,675 6.6 17.4 △672 △2.5 21,495 79.9
2025年度 5,526 3.3 19.6 4,946 5.8 17.5 △579 △2.1 22,137 78.4
2026年度 5,748 4.0 19.4 5,231 5.8 17.6 △517 △1.7 22,703 76.6
2027年度 5,955 3.6 19.2 5,506 5.3 17.7 △450 △1.4 23,194 74.6
2028年度 6,181 3.8 19.0 5,818 5.7 17.8 △363 △1.1 23,684 72.6

(注)2017会計年度は実績、2018会計年度以降は見通し。2018年予算教書付録S-1を基に作成。歳出と財政収支は12カ月分の社会保障給付標準化前の数値。
(出所)行政管理予算局(OMB)

義務的経費については、食料品などの購入に使われるバウチャーであるフードスタンプ(食料配給券)やメディケイド(低所得者向けの公的医療保険)への支出減など、多岐にわたる歳出抑制策が盛り込まれた。一方で、今後10年間で1兆5,000億ドル規模の官民投資を実現するとの方針を掲げるインフラ投資について、450億ドルを計上した。この結果、2019会計年度の義務的経費は前年度比5.6%増の2兆7,390億ドルとされた。

歳入については、2017年末に成立した税制改革法による減税効果などが反映され、前回の予算教書と比べて、3,920億ドル減少する姿とした。

この結果、財政収支は9,840億ドル(GDP比:マイナス4.7%)の赤字、政府債務残高は16兆8,720億ドル(80.3%)となり、2017、2018会計年度と比べて財政赤字幅が拡大し、債務残高も拡大する見通しが示された。

2027会計年度に財政黒字を達成するとの見通しを断念

予算教書では、2020会計年度以降も義務的経費・裁量的経費全般にわたって歳出抑制策を継続することが提唱されている。こうした大幅な歳出削減策の実施に加えて、政策変更による経済成長や所得増加の実現を通じて、10年後の2028会計年度には、財政赤字のGDP比を1.1%程度まで縮小させる見通しを示した。

前回の予算教書と同様、前提となる経済見通しについては、今後10年間(2028年まで)の年平均成長率が3.0%程度とされ、議会予算局(CBO)の1.8%程度(注2)、マーケットエコノミストの予測平均(注3)の2.1%程度などと比べて、高い見通しになっている。こういった前提から、歳入は今後10年間で年平均5.7%程度成長するとした。一方で、税制改革法による歳入減や経済押し上げ効果の変更などを通じて、歳入額は前回と比べて、2018~2027年度の10年間で計2兆7,090億ドル程度縮小する見通しとなっている。歳出面でも、オバマケアからの撤廃・代替による歳出削減効果が計上されなかったことなどから、2018~2027年度の10年間で計1兆7,490億ドル程度、前回と比較して歳出額が拡大する姿となっている。

この結果、前回の予算教書では、10年後の2027会計年度に財政収支を黒字化させるとの見通しを示していたが、今回は10年後の2028会計年度においても赤字が残り、収支改善が遅れる見通しを示した(図参照)。マルバニー長官は「われわれが提案している改革の実現が遅くなればなるほど、前回の予算教書で示したような収支黒字化は難しくなる」と述べるとともに、「実際に、われわれの行った提案のほとんどは実現されていない」と指摘した(ホワイトハウスプレスブリーフィング2月12日)。

図 財政収支と政府債務残高の前会計年度教書比較

(注1)予算教書は、その年の10月1日から始まる会計年度(翌年9月30日まで)の予算案の編成方針について、大統領が議会に対して示すもの。最終的な予算編成権は、歳出・歳入のための関連法案を議決する議会が有している。

(注2)2017~2027年度平均の見通し。

(注3)ブルーチップ調査。

(権田直)

(米国)

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