スペイン語の国際唎酒師15人が初めて誕生-国内での啓蒙促進には現地語が不可欠-

(スペイン)

マドリード発

2018年03月30日

現地大手日本食材輸入・販売会社のトーキョー屋(TOKYO-YA)はアカデミアトーキョー屋(Academia TOKYO-YA)を立ち上げ、スペイン語による国際唎酒師養成コースをスペインで初めて開設した。背景としてはスペインにおける日本酒消費増加がある。日本からスペインへの日本酒輸出額は2017年に1億971万円を記録し、前年比1.9倍の増加率となった。3月10日に試験が実施され、初となるスペイン語の国際唎酒師、15名が誕生した。

日本酒輸出額倍増、広がる日本酒需要

スペイン大手日本食材輸入・販売会社のトーキョー屋はアカデミアトーキョー屋(Academia TOKYO-YA)を立ち上げ、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が認定する「国際唎酒師」をスペイン語で養成するコースを開設した。同社は日本酒の普及を目的に2016年にスペイン初の日本酒専門バル「Shuwa酒和」を開店している(2017年8月17日記事参照)。国際唎酒師の認定試験は言語ごとに実施され、当該言語使用国、あるいは使用者に対して、その言語を用いて適切に日本酒の提供・販売ができる資格とされる。国際唎酒師認定試験はこれまで英語、中国語、韓国語、フランス語で実施されているが、スペイン語ではこれまで実施されていなかった。

国際唎酒師養成コースでは、唎酒師の資格を保有する「Shuwa酒和」のマネジャー、笹山繭子氏を講師とし、2017年11月~2018年2月までの長期コースと2018年2月17~19日の3日間で行われた短期集中コースの2コースを開講した。受講者は「Shuwa酒和」にて定期開催されている日本酒講座の生徒や各種イベントで知り合ったレストラン関係者が多数を占め、その8割がスペイン人だった。ホテル関係者、バーテンダー、日本食レストランオーナー、ソムリエと職種は様々だったが、ほぼ全員がワインについて高い知識を持っていた。

2017年の日本からスペインへの日本酒輸出額は1億971万円となり、前年の5,734万円を大きく上回った。3年連続で輸出額は増加しており、市場の拡大がうかがえる(添付資料の図参照)。日本酒は日本食レストランに限らず、ミシュラン星付の現地レストラン、南米とアジアのフュージョン料理レストランなど多岐にわたって提供され始めている。

写真 国際唎酒師(スペイン語)の試験受験者(Shuwa酒和提供)

単語を覚えることが最大の難関

開講されたコースでは、スペイン語に翻訳されたテキストを使用して酒造りの工程や歴史、保存方法や料理との合わせ方などを学んだ。受講者にレストラン関係者やソムリエが多いためか、受講者からは日本酒を試飲しながらそれに合わせる料理が次々に提案され、日本食だけでなく、タラやチーズなどを使ったスペイン料理も多く挙げられた。

今回短期集中コースを受講したマリア・ニエト・ロペス氏はワインの販売を行っており、既に日本酒も20銘柄ほど取り扱っている。従業員に日本酒の説明をするため、受講したという。コースを学ぶ上での最大の難関は単語を覚えることだとした。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)による国際唎酒師認定試験はこれまで英語、中国語、韓国語、フランス語で実施されているが、どの言語でも主要な名称は日本語のままだ。純米、吟醸、精米歩合など日本酒の特徴を表す名称はもちろん、「貴醸酒」など日本人でも耳にしない単語も覚えなくてはならない。

スペインで日本酒を広めるために

今回スペイン語での国際唎酒師養成コースを実施した経緯を笹山氏は「大前提としてスペインで日本酒を広めたいということがあった。世界中に『Sake Sumiller (酒ソムリエ)』をはじめとする英語の資格は存在するが、スペインで日本酒を広めるためには、絶対にスペイン語でなくてはならないという想いがあった。英語では限界がある」と語る。今後はマドリードだけでなく、バルセロナや他の都市での開催も考えているという。

3月10日に国際唎酒師の試験があり、初めてのスペイン語による国際唎酒師が15名誕生した。正確な日本酒の知識を持ち、顧客に提供できる人が増えれば、スペインにおける日本酒への理解も増大し、今後さらに日本酒が広まるきっかけとなるだろう。

(内川未来)

(スペイン)

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