インド南部日本食レストランのトレンド-増加する外国人がメインターゲット-

(インド)

チェンナイ発

2018年03月30日

インド南部タミル・ナドゥ州の州都チェンナイでは、近年、日本食を提供するレストランが増え、その数は10軒を超えた。ジェトロ・チェンナイ事務所では、インド人オーナーが経営するレストラン4軒に2017年11月から2018年3月にかけてインタビューを実施し、各店舗の客層や人気メニュー、食材の調達などについて尋ねた。

増加する外国人が主要なターゲット

チェンナイでは、近年、日本人や韓国人を中心に外国人人口が増加している。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、チェンナイ市の在留邦人数は2011年の515人から2016年には758人に増えた。また、在チェンナイ韓国領事館によると、約5,000人の韓国人がチェンナイに居住しているという。インドのデトロイトと称され、自動車を中心とした製造業が盛んなチェンナイには、ドイツ人やアメリカ人といった欧米人も多く居住している。 今回インタビューしたレストランは全て、日本人を中心とした外国人客を主要なターゲットに設定していることが一つの特徴と言えよう(インタビュー先やヒアリング結果の詳細は添付資料参照)。

日本食未経験のインド人は巻き寿司を選ぶ傾向

チェンナイに住むインド人は、新しい他国の料理に積極的に挑戦する人より、伝統的な郷土料理を好む保守的な人たちが多いとされる。若い世代であれば日本食などの多国籍料理に関心はあるようだが、現状では彼らを主要顧客に位置付けるには時期尚早と考える店舗がほとんどであった。日本食に関して言えば、インドでは、魚を生で食べる習慣がないため、特に鮮魚を使った寿司や刺身に抵抗感を示す人が多いようだ。

また、チェンナイでは、宗教的背景からベジタリアンが多いことにも配慮が必要だ。ベジタリアンには多くの種類や条件があり、信条などによって食事に関する制約の程度は異なる。1週間のうち特定の曜日をベジタリアンの日と決めている人もいれば、曜日に関係なくベジタリアンの食事しか摂らない人もいる。ベジタリアンのなかには、卵を摂れない人も多い。

そのため、日本食未経験のインド人は、鮮魚が含まれておらず、見た目でもベジタリアン料理とはっきりわかる巻き寿司などを選ぶ傾向があるようだ。加えて、日本人とインド人では味覚が大きく異なるため、インド人の味覚に合わせて日本食とスパイスをフュージョン(融合)させることが重要と考える店舗もあった。

日本食材の調達は高コスト

今回インタビューしたレストラン4軒のうち3軒が、同じ日本食材輸入業者を利用していた。チェンナイでは、日本食材を扱う業者が限られているため、調達ルートが限定的だ。各店舗とも日本食材の安定供給には課題は抱えていないものの、「日本食材は調達コストが高い」との声が一様に聞かれた。

今後の事業展開については、「弁当ビジネス」に注目している様子が窺えた。すでに3軒が弁当の販売を開始しており、中には日系企業が集積する工業団地近くで弁当の販売・配達を計画している店舗もあった。加えて、ホテル内に店舗を構えるレストランでは、酒類輸入のライセンスを申請中で、将来的に日本のウィスキーや日本酒の提供を検討しているレストランもあった。

(坂根良平、アルナ・アソカン)

(インド)

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