電子商取引と貿易円滑化を推進へ-ASEAN議長国としての5つの優先課題発表-

(シンガポール)

シンガポール発

2018年02月06日

リム・フンキャン貿易産業相(貿易担当)は1月17日、シンガポールがASEAN議長国として2018年に取り組む5つの優先課題を発表した。この中で、イノベーションとデジタル経済促進で、電子商取引(EC)の貿易ルールの整備に取り組む方針を示した。また、貿易の円滑化、サービス分野の統合と投資障壁の撤廃に向けて努力していく姿勢も示した。

デジタル経済の推進や投資障壁撤廃にも取り組み

リム貿易産業相は1月17日、シンガポール・ビジネス連盟(SBF)とASEANビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)が主催するネットワーキング会合での演説で、2018年に議長国としてシンガポールが「ASEANが強靭(きょうじん)で、イノベーションにあふれた地域」となるよう専念する方針を示した。シンガポールがASEANおよびASEAN-BACの議長国となるのは2007年以来だ。同相は議長国として、(1)ECを中心とするイノベーションとデジタル経済の推進、(2)域内でのシームレスなモノの貿易円滑化、(3)サービス統合に向けた一層の努力と投資障壁の削減、(4)エネルギー安全保障のため、省エネや再生可能エネルギーの導入促進に向けた規制環境の整備、(5)ASEANの中心性を維持した上での域外パートナー国との関係強化、の5つを優先課題として取り組むと述べた。

リム貿易産業相は演説の中で、ASEAN経済共同体(AEC)の下での地域統合と自由化により、ASEANのGDP総額が約2倍に拡大し、同地域が世界6位の市場に浮上したと指摘した。また一部予測では、ASEANが2030年までに世界4位の市場となる可能性があるとし、「一部の国ではナショナリスティックな動きの台頭で、反自由貿易の機運が高まっている」と述べた。その上で、「ASEANの全加盟国は、経済統合の一層の深化に向けた現行の努力を維持していく必要がある」と訴えた。

急拡大する東南アジアのEC市場

コー・ポークン上級国務相(貿易産業・国家開発担当)も同日、同じくSBFとASEAN-BACが主催するイベントで演説し、議長国としてのシンガポールが取り組む優先課題の中で、「ECの推進に向けたイニシアチブが主要な焦点になる」と強調した。米グーグルとシンガポール政府系投資ファンドのテマセク・ホールディングスが2017年12月に発表した共同レポートによると、東南アジアのEC市場の規模は2015年の55億米ドルから2017年に109億米ドル、2025年には881億米ドルへと拡大する見通しだ。同地域でのECの普及を支えているのが、域内の途上国でも急速に進む携帯電話の普及によるモバイル・ネットの利用の拡大だ。

コー上級国務相は、ASEAN加盟国と共に「特に中小・零細企業(MSME)にとって利益になるよう、域内におけるECを促進していく」と語った。そのため、「域内におけるモノやサービスの動きを支えるため、ECに関する貿易ルールを整備していく」方針を示した。

貿易の円滑化でASEANシングルウインドーを促進

貿易の円滑化の取り組みについてシンガポールは、ASEAN域内の電子通関を相互接続する「ASEANシングルウインドー」と原産地証明書の自己証明の導入を推進していくとしている。コー上級国務相は1月、インドネシア、マレーシア、シンガポールとベトナムの間で、電子版のASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づく原産地証明書(フォームD)のやり取りを開始したと述べた。このASEANシングルウインドーの取り組みには、タイが間もなく参加すると表明したほか、残りのASEAN加盟国も2018年内または2019年に参加の意向を示している。さらに、同相は議長国として「シンガポールがASEANワイドの原産地証明書の自己証明制度の完全導入に向けて努力する」と述べた。

なお、シンガポールでは2018年4月と11月に、ASEAN首脳会議やAEC協議会が開催される予定だ。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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