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違反行為を細分化、罰則はおおむね軽減-新関税法のポイント(3)-

(タイ)

バンコク発

2018年02月13日

「2017年関税法」(2017年11月13日施行)で、大きく変わったのが一連の罰則規定だ。旧法(1926年関税法)で各章に分散していた条項を見やすく整理したほか、一部の罰則規定は緩和された。また、密輸などを防ぐ目的で導入されていた報奨金制度についても、上限金額が定められ、対象範囲が細分化されるなど、改善が図られた。連載の最終回。

旧法では重過ぎる罰則が問題に

今回の関税法改正の主な変更点の1つが罰則規定の明確化だ。旧法(1926年関税法)では、主な罰則の多くが第4章(物品審査および密輸防止)第27条に集約され、該当する違反行為全てに同一の罰則が規定されていた。そのため、違反行為によっては罰則が重過ぎると問題になっていた。一方、その他の違反行為については規定が各章に分散し、参照が困難である点も問題だった。それに対し、2017年関税法では違反行為ごとに条項を設け、それぞれに罰則を記載することで罰則内容の明確化と適正化を図っている。

具体的には、旧法では密輸、関税支払い回避(脱税)、禁制品・規制品の無許可輸入のそれぞれの行為に対し、一律「輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方」を罰則の上限としていたが、2017年関税法では当該罰則規定の適用は密輸のみとし、関税支払い回避、禁制品・規制品の無許可輸入については罰則が軽減された(表1参照)。また、分散していた罰則条項についても全て第9章(罰則)に整理されている。

表1 新旧関税法における罰則一覧
項目 旧法(1926年関税法) 新法(2017年関税法)
規定箇所 罰則内容 規定箇所 罰則内容
密輸 27条 輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方 242条、245条、247条、252条(注2) 輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方
当該物品の没収
関税支払い回避 243条、245条 納付不足額の0.5~4倍の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方(注2)
当該物品の没収
禁制品・規制品の無許可輸入 244条、245条、247条、252条 50万バーツ以下の罰金、10年以下の懲役、もしくはその両方
当該物品の没収
密輸ほう助 27条bis 輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、5年以下の懲役、もしくはその両方 246条 輸入関税支払い後の物品価格の4倍の罰金、5年以下の懲役、もしくはその両方
関税支払い回避ほう助 納付不足額の0.5~4倍の罰金、5年以下の懲役、もしくはその両方
禁制品・規制品の無許可輸入のほう助 50万バーツ以下の罰金、5年以下の懲役、もしくはその両方
税関への虚偽回答、回答拒否 99条 50万バーツ以下の罰金、6カ月以下の懲役、もしくはその両方 203条 50万バーツ以下の罰金、6カ月以下の懲役、もしくはその両方(注)
申告の不備 202条、252条 50万バーツ以下の罰金
ケースマーク、番号の不備/書類への不記載 118条、119条 5万バーツ以下の罰金(注1) 211条 5万バーツ以下の罰金

(注1)旧法118条では罰則不記載。119条で関税法内に罰則の定めがない違法行為について一律5万バーツ以下の罰金を科すとしている。
(注2)新法では過失であっても責任を問われる行為を、202条(申告の不備)、242条(密輸)、244条(禁制品・規制品の無許可輸入)に限定。関税支払回避についてはその対象ではない(意図的なものに限る)。 (出所)1926年関税法、2017年関税法英語訳

また、2017年関税法に追加された条項の1つが、故意と過失の区分だ。具体的には、故意か過失かにかかわらず責任を問う違反行為を、202条(申告の不備)、242条(密輸)、244条(禁制品・規制品の無許可輸入)に限定した。一方、243条(関税支払い回避)については、故意の場合のみ責任を問う。輸出入者からすると、関税分類コード(HSコード)の分類誤りは、通関実務上たびたび生じ得るにもかかわらず、旧法では故意か過失かを問わず一律罰則の対象とされていた。そのため、故意の認定基準が示されていないとはいえ、単純な過失は罪に問わないとしたことは大きな改善点といえそうだ。

報奨金制度は存続も対象・規模が縮小

さらにタイでは、密輸や脱税の阻止を目的に、当該行為の発見者・税関担当者に輸入品価格の一定額を支払う報奨金制度が存在する。従来の制度は、差し押さえ品価格の55%および上限金額の設定なしという徴収割合の高さにより、発見者や税関担当者にとって、違反行為を見つけるインセンティブが強く働き、時に輸出入取引が過剰に検査対象となり、企業活動に支障を与えてきた。

今回の法改正により、報奨金の割合が最大で「差し押さえ品価格の40%」まで下がったほか、1件当たりの報奨金の上限も500万バーツ(約1,750万円、1バーツ=約3.5円)と定められた。また申告の不備や規制品の無許可輸入など密輸や禁制品輸入に比べて罪が軽い行為については、徴収割合も20%と差が設けられた。現地日系企業などは、報奨金制度の存在そのものを問題視していたが、内容には一定の改善が図られたといえそうだ(表2参照)。

表2 新旧関税法における報奨金制度の違い
項目 旧法 新法
徴収割合 通報者 税関担当者 徴収割合 通報者 税関担当者
通報者あり 通報者なし
密輸(242条) 55% 30% 25% 30% 40% 20% 20%
禁制品の無許可輸入(244条)
242~244条の行為のほう助(246条) (該当なし) (該当なし) (該当なし) (該当なし)
申告の不備(202条) 55% 30% 25% 30% 20% 20%
関税支払い回避 (243条)
規制品の無許可輸入 (244条)
税関職員による関税額不足の発見、徴収 関税不足分の10% 関税不足分の10%

(注1)表中のパーセントは、差し押さえ品の売却額に対する割合。差し押さえ品がない、もしくは売却不可の場合は、罰金徴収額より充当する。
(注2)新法では、通報者・税関担当者ともに受け取る金額の上限が1件当たり500万バーツと規定。
(注3)旧法は1926年関税法第102条ter、新法は2017年関税法第255条。
(出所)各関税法

ケースマークについては従来の罰則を適用

今回の罰則の改定により注目が集まった項目の1つが、ケースマーク(荷印)の記載義務だ。違反行為ごとに罰則内容を明確化した結果、第211条で、ケースやパッケージ、関連書類へのマークや番号の記載がないものについては5万バーツ以下の罰金の対象とされた。その結果、対象となるケースやパッケージの種類や関連書類が何なのか、企業から非常に高い関心が示された。

この点について、タイ関税局法務部は、ケースマークに関する罰則規定は従来と全く変わらないと説明した(2017年12月時点)。つまり、表3で示したとおり、ケースマークの記載義務や違反行為に対する罰則額は、新旧関税法で特段の違いはなく、原文のタイ語の表現を微修正したのみとのことだ。

表3 ケースマーク記載に関する新旧関税法比較表
項目 旧法(1926年関税法) 新法(2017年関税法)
条文 規定箇所 条文 規定箇所
マーク・番号の記載義務 物品を入れる全てのケースおよびパッケージはマークや番号を有していなければならない。それらマークや番号は、それら物品に関連する全ての文書に記載されなければならない。 第118条 タイに輸入され、もしくは輸出される物品のケースおよびパッケージはマークや番号が示されていなければならない。それらマークや番号は、それら物品に関連する文書にも示されていなければならない。 第59条
罰則規定 本法に基づき、また本法や他の法令で罰則規定が設けられていない行為を犯した者は、5万バーツを超えない罰金の対象となる(注)。 第119条 物品のケースもしくはパッケージにマークや番号を付さず、もしくはそれらマークや番号を関連文書に記載しない輸出入業者は、5万バーツを超えない罰金の対象となる。 第211条

(注)ケースマーク不備による罰則は第118条に示されていないため、第119条の包括規則に定めた罰則が適用される。
(出所)1926年関税法、2017年関税法英語訳

なお当該箇所につき、関税法の条文に対応する税関通達は12月25日時点でまだ発出されておらず、当面の期間は現行の税関通達No.23/2556(電子的輸入通関に係る通達)およびNo.24/2556(電子的輸出通関に係る通達)の規定に従うとされている。

示談などのプロセスも今後公表を予定

なお上述の罰則は、裁判になった場合の上限を示している。そのため、裁判にならず、調停委員会(注)や関税局内の段階で示談に至る場合には、軽減された罰金のみが科される。このような仕組みは旧法でも取り入れられていたが、手続きの不透明性が指摘されていた。本件に関しタイ関税局法務部は、今後適切なタイミングで、税関職員の実務担当者向けマニュアルである税関実務コード(Customs Code of Practice)を公開することを検討していると説明した(2017年12月時点)。当該コードには、裁判に至らない場合の手続きの流れやその場合の徴収金額も含まれているため、公表の折には一層の税関手続きの透明性の向上が期待できそうだ。

(注)調停委員会は、陸送手続き違反、密輸、脱税、禁制品・規制品の無許可輸入、それら行為の実行者に関するもので、貨物の価格が40万バーツを超える案件を扱う。また、関税局は貨物価格が40万バーツ以下のものや、その他の違反行為の案件を扱う。

(蒲田亮平)

(タイ)

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