15日超の緊急業務には労働許可書が必要に-雇用局、緊急業務対応にかかる手続きで見解示す-

(タイ)

バンコク発

2018年02月26日

タイで就労するには原則として、労働許可書〔ワーク・パミット(WP)〕が必要となる。ただ、15日以内の短期緊急業務には「緊急業務届(ワーク・パミット10)」を雇用局に提出することで、労働許可書がなくとも就労が可能だ。しかし、この緊急業務届について、延長の可否など手続きの詳細が不明瞭だったため、ジェトロはタイ雇用局にヒアリングを行ったところ、15日を超える場合の延長は認められず、労働許可書の取得が必要との見解が示された。

タイにおける「就労」を雇用局が定義

タイで就労するには労働許可書〔ワーク・パミット(WP)〕が必要だ。この「就労」について、タイの外国人就労法(2008年)第5条は、「(就労とは)賃金・その他の利益のいずれを追求するにかかわらず、肉体または知識をもって働くこと」と定義している。

しかし、これでは短期のタイへの出張を含め、あらゆる活動が「就労」に該当してしまい、労働許可書がなければ、不法就労と見なされてしまう。

そのため、タイ雇用局は2014年7月8日付の布告「緊急業務届(ワーク・パミット10)申請を必要としない活動のための実施規範」において、以下の活動は、「就労」ではない(労働許可書が不要)と公表した。

  1. 会議・セミナーの「参加者」の立場で、当該事業の実現に関与することなく入国する者(会議・セミナーの主催者の従業員や請負人は就労に該当)
  2. 企業の「視察・商談担当者」の立場で入国する者(企業視察・商談をセッティングする者の従業員または請負人は就労に該当)
  3. 特別・学術講演の「聴講者」の立場で入国する者
  4. 技術研修・セミナーにおける講義の「聴講者」の立場で入国する者
  5. 展覧会・展示会の「見学者」の立場で入国する者
  6. 展示会における「商品購買者」の立場で入国する者(展示会設営者の従業員または請負人は就労に該当)
  7. 自社の取締役会への参加:2015年3月6日付の雇用局布告「2008年外国人労働法に基づく就労に該当しない活動」により追加

緊急業務届の取得が必要な活動を列挙

上記の1~7以外の活動には、正規の労働許可書が必要となるが、労働許可書の取得には時間がかかる(申請受理から3営業日程度)。そのため、タイ雇用局は「タイ工場の機械故障による修理」など緊急を要する活動については、「緊急業務届(ワーク・パミット10)」を提出することで15日以内の就労が可能とし、さらに2017年6月28日付の布告「緊急かつ必要な業務の指定」で、緊急業務の対象を以下の1~16に定義している。

  1. 会議、トレーニング、またはセミナーの開催
  2. 特別学術講演
  3. 航空管理
  4. 内部監査
  5. フォローアップ作業および技術的な問題解決作業
  6. 製品または商品の品質検査
  7. 生産工程の検査または改善作業
  8. 機械および発電設備の点検または修理作業
  9. 機械の修理または設置作業
  10. 電車システムの技術的作業
  11. 航空機または航空設備の技術的作業
  12. 機械修理または機械制御システムのコンサルテーション
  13. 機械のデモンストレーションおよびテスト
  14. 映画または写真の撮影
  15. 国外での就労者を送り出すための就労希望者の選定作業
  16. 国外での就労者を送り出すための技能者の試験

緊急業務が終了しない場合は労働許可書に切り替えを

このように、緊急業務の定義については明文化されたものの、15日以内に緊急業務が完了しなかった場合の対応は不明確だった。そのため、ジェトロがタイ雇用局に確認したところ、「15日以内に緊急業務が完了しなかった場合、緊急業務届の延長は認められず、正規の労働許可書の取得が必要となる」との回答を得た。その際、当外国人がビジネス・ビザ(Bビザ)を取得して、緊急業務対応でタイに入国していれば、労働許可書の取得が認められる。

しかし、Bビザを保有せずに入国していた場合には、タイから一度出国しなければならない(注)。

このように、緊急業務届のみで15日を超えてタイにて就労行為を行うと、不法就労と見なされ処罰の対象となり得る。また、ビザの有無によっても手続きが異なってくるため、緊急時の対応には注意が必要だ(図参照)。

図 労働許可書に関するフローチャート

(注)Bビザは、タイにおける事業提携者との会合出席や、あらかじめ準備された専門的な仕事の遂行などを滞在目的とする。

(長谷場純一郎)

(タイ)

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