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卸売価格で消費財を提供するモバイルコマースサービス-ボックス創業者に聞く-

(米国)

ニューヨーク発

2018年02月23日

ニューヨーク市に本社を構えるボックスは、ミレニアル世代を主なターゲットとして、卸売価格で日用品や食品を購入することのできるモバイルコマースサービスを提供している。同社は、コストコ・ホールセールなどの倉庫型卸売店のサービスを、より多くの人々に提供したいとの考えから、卸売価格の商品をオンラインで購入できるようにした。通販サイト分野には複数の競合他社が存在する中、ボックスはデザイン性が高く、高品質の商品を低価格で提供しているほか、プライベートブランドを展開することで独自性を発揮している。同社の創業者で最高経営責任者(CEO)のチエ・ハーン氏に事業内容について聞いた(1月18日)。

「オンライン版のコストコ」として注目集める

2013年創業のボックスは、日用品や食品(生鮮品・冷凍食品を除く)を卸売価格で購入できるオンラインサービスを提供している。これまでも、コストコ・ホールセールやサムズ・クラブ(ウォルマート傘下)といった会員制の倉庫型卸売店では、大量に仕入れた商品を低価格で販売するサービスを提供してきたが、年会費が必要なことに加え、こうした店舗が近くにない消費者にとっては不便な面があった。また、ニューヨークなど都市部の消費者は、自動車の所有率が低いこともあって、大量購入した商品の持ち運びが大変といった声も聞かれた。そこでボックスは、ネット通販に慣れ親しんでいるミレニアル世代を中心に、大手倉庫型卸売店へのアクセスが難しい顧客層も取り込むかたちで、手軽で安価な消費を可能とするサービス提供を目指している。

フルフィルメント機能の拠点を3カ所に

(問)事業モデルを考えるに至ったきっかけは。

(答)最近の消費者は、欲しいものをより便利かつ迅速に購入することができるオンライン購入を好むようになっており、こうした選好の変化に対応したサービスを実現し、利便性の向上を図りたいと考えた。

もともと、親友や起業家仲間らとともに(2013年に)立ち上げた事業だ。メンバーのいずれも幼少時代は郊外に住んでいたこともあり、車で買い出しに行き、大量の日用品を卸値で購入することが当然だった。しかし、ニューヨーク市に移住してからは、同様の行動を都市部で行うことがいかに難しいかを実感するようになった。こうした中、コストコやサムズ・クラブなどの倉庫型卸売店の大手は、消費のオンライン化に十分対応できていないと考えるようになり、新たなビジネスチャンスがあると感じた(注)。

今では、フルフィルメント機能(オンラインで購入された商品の保管・配送などを引き受ける機能)を持つ拠点を、ニュージャージー州、ネバダ州、テキサス州の3カ所に構えるようになっており、全米各州に迅速な配送を可能としている。

(問)提供するサービスの特徴は。

(答)当社は、アマゾン・ドット・コムやジェット・ドット・コムなどのように、多品種の商品を単に販売するのではなく、消費者からの需要が高い商品を厳選し、大量購入するといったサービスを提供している。例えば、当社が展開するプライベートブランドの「プリンス・アンド・スプリング」は、高品質でデザイン性の高い商品開発にこだわり、商品を大量に生産・仕入れることで、低価格での販売を実現している。同ブランドの商品展開数は、現在65を上回るまでになったが、今後も拡大し続けていく予定だ。「プリンス・アンド・スプリング」は、アマゾンの(電化製品を除く)プライベートブランドと比較しても売上高の伸び率が高く、2016年には前年の約11倍となった。

倉庫システムの自動化で業務の効率を改善

(問)EC取引を行う上で主な課題とは。

(答)現在では、どれだけ迅速に商品の配送・フルフィルメントに対応できるかといった点が小売業者にとっての最大の課題だ。独自の商品を販売するだけではなく、その商品をいかに迅速に配送できるかが、他企業との差別化を図る上で重要だ。設立当時は、ガレージ(車庫)を作業スペースとしていたが、より多くの受注に迅速に対応し、電子商取引(EC)ビジネスで生き延びていくためには、(受注から発送に至る)事業をより効率化することが不可欠だと感じた。このため、2017年5月からニュージャージー州の倉庫内システムを完全に自動化することで、顧客への応答時間を短縮し、処理能力を一段と改善することが可能になった。

(問)倉庫システムの自動化により、どのように業務の効率を改善したのか。

(答)自動化する前は、従業員が広い倉庫内を歩き回り、顧客から注文のあった商品を棚から集め、出荷用に梱包(こんぽう)する作業を行っていたため、とても手間がかかっていた。そこで、人工知能(AI)を搭載した無人搬送車(AGV:automated guided vehicle)を開発・導入した。これにより、商品選定担当スタッフが梱包に必要な商品を棚から選んでAGVに乗せると、自動的に梱包担当スタッフの元へ商品を運ぶことができる仕組みになっている。AGVには、マッピングソフトウエアが搭載されており、常に倉庫内で商品を移動させる最適ルートを計算し、倉庫内における効率的な商品搬送が実現可能となった。この仕組みは、梱包するために人が歩いてモノを選定するのではなく、梱包するためのモノが人に向かって移動するといった「モノを人へ(届ける)」というアイデアが元となっている。AIや自動化技術は、単に人間が行っている作業を代替するものではなく、人間が他の仕事に集中し、効率化を図るために利用するものと考えている。従業員からは、当初、倉庫システムの自動化によって職を失う者が増えるのではないかといった懸念の声も聞かれたが、結果として、失業した者は1人もいなかった。逆に、カスタマーサービスやソフトウエアのトラブルシューティングなど、新たな任務を果たすための研修を受けることを通じて、人間による対応が必要な職務に就くことができた。

写真 全自動化された倉庫設備の様子(ボックス提供)
写真 人工知能を搭載した無人搬送車のイメージ(ボックス提供)

AI技術を生かした新サービスも展開

(問)EC市場の現況と今後の発展可能性は。

(答)EC市場では、小売事業者が消費者の消費習慣をこれまで以上に十分に把握し、個別ニーズに合った消費体験を提供できるよう、さまざまなデータ活用を進めるといった動きへとシフトしている。消費者側でも、より賢く買い物ができる方法を探求する動きがみられ、必需品のように、日々買わなければならないものは、なるべく少ない手間で購入できることが望まれるようになっている。

こうした流れを受け、「自動化(automation)」が1つのキーワードになっており、当社では、AIによる機械学習技術を生かした新たなサービスを展開している。「スマート・ストックアップ」というサービスでは、注文履歴データを基に消費者の購入傾向を分析し、在庫が少なくなると予測される商品の状況を通知し、ボタン1つで再注文を行うことができるようにする仕組みを構築している。また、「コンシェルジュ」サービスでは、同じ商品を定期的に購入する企業に対して、商品が欠品となりそうなタイミングで、自動的に追加注文から発送までを行うサービスを提供している。

今後は、市場規模が大きい企業間取引(BtoB)分野に大きなビジネスチャンスがあると考えている。特に中小企業や小規模事務所を念頭に置いており、消費者だけでなく、企業もターゲットとすることで、売上高の拡大を図ることができると考えている。これまでのところ、企業分野の売上高は3桁台の成長をみせているが、デルタやユナイテッド航空、写真・動画共有アプリを提供するスナップなど、主要な取引先の半数近くが新規顧客となっている。

(注)その後、コストコ、サンズ・クラブはともにオンラインサービスを提供している。

(樫葉さくら)

(米国)

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